日本人が知らない「GAFA」包囲網が示す意味 データをめぐる戦いは安全保障問題でもある
GAFAに続いて、バイドゥ、アリババ、テンセントといった中国のITサービス企業の頭文字をとった「BAT」という言葉も次第に浸透しつつある。現在でも7億人以上のネットユーザーを抱えると言われる巨大市場は中国一国であってもGAFAに匹敵する潜在性を有している。
そして、中国は国家が国民を主導する管理社会だ。BATなどが展開するサービスを通じて最終的には政府が個人データを管理することができる。特に顔認証などの技術は進んでおり、ウェブサービスを通じて取得した顔データを使って、警察が犯人を特定するなどといったことが行われている。
こうした中国型のデータ経済圏が、東南アジアや中東、アフリカに展開されていけば、習近平政権の「一帯一路」構想や、今後10年間の製造業発展計画である「中国製造2025」とあいまって、中国にとってAIやIoTといった今後の成長産業における大きなアドバンテージとなる可能性がある。
プライバシーに配慮しなくてはならない欧州や日本の企業が中国型のモデルを実施することは不可能だろう。中国主導のデータ経済圏が形成される前に、個人のプライバシーを基本的人権と位置づけ、公正性と透明性が確立されたGDPRのような欧州型のデータ規制が国際的な標準として確立されれば、先行するGAFAのみならずBATに対する牽制ともなり、日本企業としてはビジネスチャンスが広がる可能性がある。そのためにも、日本としては欧州型のデータ規制を推進していくことが望ましい。
国をもゆるがす安全保障問題
データをめぐる戦いは安全保障問題でもある
あなたが先進的なビジネスマンであれば、競争法やGDPR、デジタル課税といった欧州勢が繰り出す規制網に対して、あるいは、「必要なのはイノベーションであって法規制ではない。このような手法でビジネスを保護することは妥当ではない」という意見を持っているかもしれない。
しかし、問題は産業政策だけにとどまらない。欧州がGDPRを導入する引き金となったのは「スノーデン事件」だった。元CIA職員による暴露によって、欧州の要人たちの会話が米国側に傍受されていたという衝撃の事実が、ヨーロッパ人たちの危機意識を惹起したのである。現代の戦争は必ずしも兵器を用いた戦闘に限られるわけではない。各国とも、今後サイバー空間における争いが激しさを増していくことを見据えて対策を検討している。つまり、GAFAを取り巻くデータ規制は、人権保障や産業政策だけではなく、むしろ安全保障にもかかわる問題なのである。
EUではクッキー規制やデジタル課税に加えて、フェイクニュースやテロに関連数コンテンツに対する監視・削除義務や、著作権使用料の支払い、AIの倫理指針といった新しい規制が次々と検討されている。さまざまな要因を背後に抱えるGAFAと各国の攻防は、今後ますます熾烈なものになっていくと思われるが、最終的にGAFAは国家からの要求に対して折り合いをつけることを余儀なくされることだろう。
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