イタリアンを楽しむ異業種交流会は、いつしかお金持ちの年配者を対象に、投資話を持ちかける会となっていった。
また、彼女が、シンガポールや香港など諸外国に自分の銀行口座を開きに行くようになったので、羽振りが良くなっているのが目に見えてわかった。
あるとき響子は、四国に植物を燃やして電力を起こすバイオマス発電所を作るという投資話を岩下に持ち掛けた。
「それまで私は、彼女の投資話には乗っていなかったんですが、その発電所の工事をするのが日本の有名な電機会社で、そこの会社の判子が押してあったんです。そこで私も、これなら大丈夫だろうと話に乗りました」
「結婚詐欺」「投資詐欺」2足のわらじ
響子は街カフェを始めた頃から、同時に結婚相談所も一緒に始めていた。
「彼女はそこに自分自身を登録をして、80歳、90歳の資産家に申し込みをかけていたようです。また独身の金持ちを登録させて、見合いもさせていた。相談所を通じて人間関係を築いた後に、街カフェに呼んで、投資話を持ち掛けていたんです」
中には、お見合い後に響子とお付き合いに進展し、その後、「婚約した」と思い込んだ81歳の男性もいた。
「街カフェでの顔見知りだったその男性に、『響子さんとの結婚が決まって、400万円のダイヤの指輪も贈った』という話をされたんです。その頃、私はもう響子とは友人としての付き合いだったから、誰と結婚しようがかまわなかったけれど、81歳の男性が騙されているとしたら気の毒だと思い、響子にそのことを聞いた。すると、『指輪はもらったけれど、それはプレゼントで婚約指輪ではない』と言い張る。しかも、フタを開けたら、その男性は、数千万ものお金を響子の投資話につぎ込んでいたんですよ」
時を同じくして、岩下には気になることがあった。バイオマス発電所に投資し、1年目には20%の配当金があったものの、2年目から配当金がない。おかしいと思って調べたら、その投資話は偽物で、日本の有名な電機会社の判子は偽装されたもの、ファンド会社は幽霊会社だった。
騙されたと知っても、後の祭りだった。
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