先日、1通のメールが届いた。
「結婚詐欺に遭いました。それでもやっぱり結婚したいんです。面談を希望します。加藤聡美(仮名)37歳」
やってきたのは、キリリとした黒目がちの瞳が印象的な柴咲コウ似の美人だった。今は働いていないというが、少し前まではある会社で社長秘書をしていたという。紅茶を静かにすする所作には知性と品があり、結婚詐欺に遭ったことがにわかには信じがたかった。
「話を詳しく聞かせてもらってもいいですか? どこで出会った人?」
「一昨年の10月に婚活アプリで知り合いました」
会員数500万人の大手アプリで出会った相手は…
登録料が安価で気軽に出会える婚活アプリは、ここ数年大人気だ。ITやSNS関連会社、日本を代表する大手企業が次々に参入し、怪しい“出会い系”のイメージを払拭、婚活したい男女の出会いの場として今や認知されている。
婚活アプリで幸せな結婚をしている人たちもいるのだが、気軽さがトラブルを招くこともある。登録にあたりチェック機構が設けられてはいるものの、それをくぐり抜けて既婚者が登録したり、プロフィールを偽ったり、宝石やマンションなどを買わせるデート商法がはびこったり、高額保険の勧誘が横行したりしているのも、また事実だ。聡美が“結婚詐欺に遭った”という婚活アプリも、大手が運営する会員数500万人を誇る有名なアプリだった。
今回は、聡美が遭った結婚詐欺の顚末を記す。
婚活アプリでマッチングした相手、健治(仮名)と実際に会ったのは、一昨年の10月のことだった。自分よりも3つ下の34歳。差し出してきた名刺を見ると、誰もが知る有名企業に勤めていた。健治の両親はすでに他界していたが、亡くなる直前に母親から、「結婚してほしかった。孫の顔が見たかった」と言われたのが心残りだったという。
「だから結婚できる女性を真剣に見つけたいと思って、婚活アプリに登録したんです」。健治は真剣な表情で言った。
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