企業診断のプロが教える「就職企業の探し方」 いい会社は営業利益率と研究開発費でわかる

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「学生は、会社説明会などで『大きな失敗をしながら、最終的に重要な経営のポジションに昇進した人はいますか』などと直球で聞いてみるのもアリ」(太田氏)という。

一方、質問という点で吉田氏は、どんな社員が新規事業に携わっているのかを聞いてみるのも手だとする。「新規事業を担う部署に、エース級の人材を登用しているなら、成長の可能性が高い。一方で、社内で左遷人事を意味するなら、その逆ということです」(吉田氏)。

今の時期は、企業選びよりも前に、「自分が社会に出て何をしたいのかが見えない」という学生は少なくない。そうした学生はどうしていけばよいのだろうか。

太田氏は「自分史を書くこと」を勧める。「思い出せる範囲で、幼いころから今まで自分がやってきたことを、すべて書き連ねてみます。そうすると、今の自分の志向は、過去に遭遇した1つ1つの出来事から影響を受けて作られているとわかります。自分史の中で情熱を傾けられたことを把握できれば、それに近いものが、将来的に仕事でも熱中できることなのでしょう」(太田氏)。

就活準備での自己分析は、壮大な作業に思われがちで、何から着手してよいかわからないと感じる学生が多いようだ。太田氏の助言にあるように、単純に過去の自分が何に興味をもっていたかを洗い出してみることで、自分の行動パターンや趣向が整理されるかもしれない。

直感で判断することも大事

企業選びの技術的な側面での話が中心だったが、最後に就活での心構えについても意見があった。

高津氏は、実際に社員に会ったり、会社説明会に参加したりするときには、「直感的な違和感や不快感も意外と目安になります」と語る。「たとえば、みんなが飲み会に行くから自分も行って、楽しいフリはするけれど無理をしている、などという状況は経験があるはずです。企業選びも同じ。会社説明会でどこか居心地が悪いと思うなら、きっとマッチしていない。逆になぜか落ち着くと感じるなら、悪くないはずです」(高津氏)。

インターンシップや会社説明会、OBOG訪問などを通じた情報収集は、就活の勝負どころの一つではある。しかし、どれほど情報を集めても、百聞は一見にしかず。社風も仕事内容も職場で働く人たちの性格も、実際に働いてみなければ本当にはわからない。そこで吉田氏は、エントリーする企業選びでも、複数の内定から1社を選ぶときにも、「決め切る重要性」に言及する。「まずは集めた情報を自分なりに多角的な視点で検討してみてください。あれこれ悩むことも、決めた後の納得感を得るために必要です。そうして1度決めたら、『自分は現時点でベストな判断をした』と、信じきりましょう」(吉田氏)

田中氏も「大事なのは常に『今の自分』に正直でいること。だから1年後に全く違うことを考えていても、その変化を怖がらないでほしいです。人は進化し続けるわけですから」と、同調する。

企業選びに正解はない。だからこそ大切なのは納得感であり、そのために判断する材料は多ければ多いほどよいということだろう。4人のコンサルタントが伝授する「BtoB企業を調べてみる」「企業の営業利益率を確認する」「研究開発費の比率を調べてみる」など、様々な方法を試してもらいたい。こうした具体的な手法以上に、学生に受け取ってもらいたいメッセージは、「企業選びに正解はなく、選んだ道で正解だったと言えるよう、やり切ることが重要」だということだ。

就職ジャーナル編集部

リクルートキャリアが運営する「『ホントは知りたい』がここに。」をテーマに、就職活動をこれから始める方、少しずつ始めている方向けのメディア。就職ジャーナルをWebなどで展開。

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