日本の旅館は、なぜ台湾でウケるのか? 成功する「日本式」の輸出、石川・加賀屋の台湾進出

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そんな姿勢が評価され、今年秋に台湾の旅行サイト「蕃薯藤」が発表した「高級温泉宿泊施設トップ10」で、「日勝生加賀屋」はトップに選ばれた台湾各地の並みいる老舗の温泉宿泊施設を抑え、最高の評価を受けることになった。理由は日本式の徹底した「おもてなし」のサービスを台湾で初めて提供し、そのクオリティを開業以来、しっかりと維持していることにある。

 現在、90室のうち台湾人の宿泊客は全体の7割に上る。最初の半年は日本からの利用客が3割ほど占め、台湾人は6割程度だったが、今では日本人は2割を切るようになった。代わりに台湾人が増える傾向にあるという。また、台湾と同じように日本観光に詳しい香港人の利用も目立つ。稼働率は現在6~7割でまだ日本の「本家」には及ばないが、スタートダッシュとしては十分すぎる成果だと言える。

台湾も日本と同様の「温泉国」だが、そのスタイルには大きな文化的違いがある。台湾では温泉は、まず水着を着て入るプールタイプの大浴場が多い。その点になじめない日本人は少なくない。私自身は、それはそれと割り切れば嫌いではないが、やはりほっと一息つけるような風情はない。

あえて日本流のサービスを貫く

一方、最近ではプライベートな空間を重視したタイプの温泉施設も増えてきている。私自身、いろいろ各地で泊ってみたが、コンクリートの打ちっぱなしの建築で格好はいいが、窓が少なくてまるでラブホテルのような感じだ。くつろげないという点では、あまり違いはないように思える。

日勝生加賀屋で董事(取締役)を務める徳光重人氏は、台湾滞在歴が18年を超える台湾通だ。徳光氏によれば、台湾では、部屋まで従業員が入ってくることはタブーに近いものがあり、できるだけプライバシーを守ることが不文律。そこに日本式の仲居さんによる至れり尽くせりのサービスを持ち込むことには、当然、一定の難しさが存在するという。

しかし、日勝生加賀屋では客室のサービスについてもいっさい変えることなく、日本スタイルを貫いているという。また、従業員については、日本の加賀屋で数カ月の研修を行うなど、本物の「おもてなし」の導入にこだわった。

現地で運営の指導にあたる加賀屋顧問の野村智久さんはこう語る。

「あれをしてはいけない、これをしてはいけない、と禁止するやり方ではなく、一つひとつのマナーに意味があることを理解していただき、日本文化の神髄に気づいてもらいたいという思いで、おもてなしを追求したい」

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