経済学の本質を知りたい人に教えたい現在地

富がいかに生まれ現在があるのかを探求する

中谷:歴史ということに関連していうと、近年、「人新世」という概念が議論されるようになっていますね。これは、現代は新しい地質時代に入ったという見方です。

「人新世」という概念は「資本の論理」に通ずる

産業革命以来、人類はプラスチックやアルミニウム、放射性物質など、生態系にとって異質な物質を大量に作り上げてきて、それらは土中にどんどん累積しています。

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とりわけ1950年前後を境にして、急激な人口増加、大量生産と大量消費、農業、畜産業の大規模化など、人間活動が爆発的に増大しました。そこで、後世の人たちが現代の地質を分析してみると、彼らはそれ以前とは明らかに違うものが累積していると見るのではないか。それをある地質学者が「人新世」と呼び、学問分野を超えて活発な議論が巻き起こるようになっています。

人新世に関する議論を見ると、利益成長を最重要課題とする「資本の論理」をなんとかしないと、人類と環境は共存できないという見方をする人もいます。地球温暖化や砂漠化など、人新世がもたらす環境危機は、人間の生活をも破壊しかねない。

資本主義が成立してから、資本の論理というもので経済活動は営まれてきました。資本の論理とは、自分が投資した資本に対するリターンの最大化を至上命令とすることです。そのために資本家は、労働者であろうが自然資源であろうが利用できるものは何でも利用する。その結果がいま人新世というかたちで地質学的変化にあらわれているのだ、と。

こうした問題に対して、経済学はどのような貢献ができるでしょうか。

瀧澤:地球を人間が創り出している世界と見るならば、自然科学だけでなく、人間科学や精神科学の対象としても考察しなければなりません。

僕は、経済学が人間行動をも対象とするようになったいま、経済学は「人間科学」として、人間存在の本質を絶えず問い直しながら、自らを反省する包括的な科学になっていくことが必要だと考えています。こうした強い主張をした背景には、いま先生がおっしゃったような人新世に関する議論がある。

これからの経済学では、いままで以上に学際的なアプローチが重要になっていくでしょうし、経済学者もそのことに自覚的にならなければならないと思います。

(構成:斎藤 哲也)

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