経済学の本質を知りたい人に教えたい現在地

富がいかに生まれ現在があるのかを探求する

時間と空間という軸で「経済史」を語るとき、現在の位置は一体どこなのか。瀧澤弘和氏(左)と中谷巌氏(右)が語った(撮影:山内信也)
20世紀半ば以降、経済学は急速に多様化していき、学問としてはわかりにくさを増した。かつて“社会科学の女王”と呼ばれた経済学の現在地を提示し、その未来と果たすべき役割を論じた『現代経済学 ゲーム理論・行動経済学・制度論』の著者、瀧澤弘和氏と、経済学者の中谷巌氏が、現代の経済学について語り合った。

ホモ・デウスと行動経済学の共通点?

中谷 巌(以下、中谷):僕が昔、経済学を学んだ時代は、一般均衡理論に代表されるミクロ経済学とケインズを起点とするマクロ経済学が主流でした。いまでも多くの大学の経済学部では、この2つが中心でしょう。

しかし、瀧澤さんが近著『現代経済学』で論じているように、この30年くらいの間に経済学の世界では新しい手法が次々と生まれている。それを端的に表現しているのが、副題にある「ゲーム理論・行動経済学・制度論」ですね。

瀧澤 弘和(以下、瀧澤):ありがとうございます。私は、最近邦訳が出たユヴァル・ノア・ハラリの著書『ホモ・デウス』を批判的に取り上げました。同書のなかでハラリは、人間の将来に関して、さまざまなシナリオを思考実験していますが、最終的には、近代的なヒューマニズムの時代は終わり、データ主義の時代へ移行する、という暗い見通しに傾いています。

ハラリに言わせれば、現在の科学技術は、人間をますます操作の対象として見るようになっている。それを突き詰めていくと、人間はデータの束に還元され、人類は自分自身を作り変えるような社会になっていくだろう、というのです。

私は、ハラリの著作を読んで、近年の経済学の研究と通底しているものがあるように感じました。それは、一部の行動経済学や神経経済学に顕著なように、人間の行動を自然科学的に解明していくというアプローチです。これを自然主義的アプローチといいます。

では、ハラリと行動経済学の一部に共通する自然主義的アプローチに対して、どういう批判が可能なのか。その1つとして、私は「制度をつくるヒト」という人間観を提出しました。私たち人間は、先人たちが作り上げてくれた制度のなかで育ちながら、認知能力を獲得し、新たに制度を作り上げていく。

しかし、人間存在のこのような側面は、自然科学的なアプローチでとらえることは難しいと思います。制度は、自然界に属するとも、人間界に属するとも言えないようなものだからです。

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