日揮と千代田化工、北米に進出するワケ 未開拓マーケットで大型受注獲得へ
シェール革命で一変
「今回の受注は北米市場における大きな第一歩。金額以上の重要な意味がある」と日揮の幹部は言う。これまで日本のプラントエンジ会社は、中東や東南アジアなどを主戦場としており、北米はほぼ未開拓のマーケット。北米にはエンジ業界の巨人、ベクテルとKBRを筆頭に数多くの現地の競合企業がひしめいているからだ。
しかも、長期にわたって大型プラント新設が少なかったため、日本のプラントエンジ会社にとって、市場としての重要性は低かった。国内最大手の日揮でさえ、過去に100億円前後の仕事を何件か手掛けた程度にすぎない。
だが、この状況をシェールガス革命が一変させた。シェールガスは、米国内に大量に存在する泥岩層内の天然ガス。近年、採掘技術の進歩などで開発が各地で進み、産出量が急増。供給量が増えたことで米国内の天然ガス取引価格は大幅に下がり、安価になったガスを原料とした各種プラントの建設計画が相次いでいる。
このビジネスチャンスをつかもうと、北米市場へ大きく舵を切り、エチレンプラントの大物を射止めた日揮。だが、その視線はさらなる大型案件へと向いている。天然ガスを液化するLNG(液化天然ガス)プラントだ。
テキサス州南部のメキシコ湾沿岸にある「フリーポートLNG基地」は、専用タンクと港湾設備を備えたLNGの輸入受け入れ基地だ。同施設を所有・運営するフリーポート社は、これをLNGの輸出用の基地へと衣替えさせる。米国内で産出した天然ガスを海上輸送用のLNGにする専用液化施設を新たに基地敷地内に建設し、17年から輸出を開始する。すでに大口販売先として、日本の大阪ガスや中部電力とも長期売買契約を結んだ。
数年前まで米国ではエネルギー不足が懸念され、LNG輸入基地が東海岸で相次ぎ建設されたが、シェールガス革命で輸入自体の必要性が乏しくなった。そこで、安価な米国産天然ガスをLNGにして輸出しようとする計画が相次いでいる。フリーポート基地はその一つだ。米国では、フリーポートと同様のプロジェクトが次々と立ち上がっている。
さらに隣国のカナダでも複数のLNG計画が浮上している。カナダはパイプラインを通じて米国に天然ガスを供給してきたが、シェールガス革命で米国の購入量が年々減少。その穴を埋めるべく、西海岸からLNG方式でアジアへの輸出を目指している。
天然ガスをLNGにして輸出するには、液化設備が欠かせない。その受注獲得に向けて動いているのが、日揮と千代田化工建設である。
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