イエレンFRB次期議長の大きなリスクとは?

上院公聴会の証言でわかった、危うい現状認識

一方、イエレンが新FRB議長になるという見込みが高まると、市場は逆に大きく上げた。なぜなら、量的緩和縮小のタイミングもペースも、イエレンであればより緩やかなものとなると思われたからだ。

 これがイエレンのリスクだ。量的緩和の縮小が遅れ、それにより、国債価格、MBS価格が高止まりを続け、金融市場に資金が余り続け、資産バブルが起きるということである。これにより、景気が過熱し、インフレが起きることになる。同時に、政府の財政緊縮が遅れ、堕落した赤字まみれの過大な政府が存在し続けることになる、というのが共和党保守派の意見であり、イエレン批判の理由である。

しかし、これに対しては、イエレンは、証言の中で、少なくとも言葉の上では、懸念を払拭しようとしている。量的緩和にはリスクがあり、資産市場の過熱、バブルをもたらすことのないように注意する、ということを繰り返し述べている。だから、イエレンのリスクというのは、心配する必要がないように見える。

量的緩和の本当のリスクとは?

イエレンの量的緩和に対する考え方は以下のようなものだ。量的緩和にはリスクがある。しかし、量的緩和は、2008年の金融危機からの回復において大きな効果を発揮した。このメリットとリスクを勘案すると、メリットが上回り、リスクは現時点では実現しておらず、高まる懸念も現時点では大きくないので、量的緩和はリスクを慎重にウォッチしながら継続する。こういった考えだ。

一見、完璧にみえるが、ここに大きな落とし穴がある。量的緩和を継続することのリスクとは、そのリスクを軽視することではなく、そのメリットを過大評価することにあるのだ。そして、イエレンは見事にそのわなにはまっている。

イエレンの議会証言でのもうひとつの軸は、現在の米国経済が通常ではない、という認識の表明だ。失業率が依然高すぎる。これは異常事態だ。そして、これまで米国経済の正常化に対して金融緩和、とりわけ量的緩和は、大きな効果を発揮してきた。だから、今後も、米国経済の異常事態が続くかぎりは、通常の経済状態においては異常ともいえる量的緩和政策を継続する意味と意義がある。こういう認識の表明だ。

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