ただ、意思の疎通に問題がありました。そのテクニカルライターはあまり協調性がなかったので、私の部下は彼女と一緒に仕事することを好みませんでした。上司である私は、部下が「話を聞いてもらえている」「評価されている」と思えることのほうが重要なのか、プロジェクトを成功させることのほうが重要なのか、判断を迫られました。
当時の状況では、プロジェクトを完遂することに意味がありました(彼女には、ほかの部下にない専門性がありました)。そこで私は部下に、彼らの困難な状況を理解していると伝えました。そしてプロジェクトが終わる頃には、部下も理解を示してくれました。仕事がうまく行ったことを喜んでくれ、彼女を雇った理由も理解してくれました。ただ、彼女とは2度と仕事したくないようでした。
1人の存在が職場環境に影響を及ぼす
管理職がギグ・エコノミーについてどう見たらいいのかと考えた時、この経験をよく振り返ります。そんなことはないと思うかもしれませんが、1人の人、それがギグ・ワーカーであるかどうかに関係なく、1人の人の存在が職場環境に影響を及ぼすのです。それがわずか数カ月の契約社員であっても、組織の一部とならなくてはなりません。ですから上司は、2つの重要な観点でマネジメント手法を考え直す必要があるでしょう。
先述のギグ・ワーカーとの仕事で、私が犯した最大の過ちは、「オンボーディング(職場への受け入れ)」と「オフボーディング(離職までの段取り)」に十分な時間をかけなかったことでしょう。彼女に、その時の部下とどのように意思疎通し協力してほしいかを理解してもらうことに時間をかけず、彼女が退職する前のブリーフィングも行いませんでした。
短期雇用の社員にこのようなプロセスを実施するということは直感的には理解しがたいかもしれませんが、ギグ・ワーカーも部署の会議に参加することがあり、(限られた時間ではあっても)組織の一部に組み込まれることになるのです。
ある予測によると、新規採用者が入社してから完全に生産性を発揮できるようになるまで、8カ月から1年かかるとされています。これだけの時間がかかれば、ギグ・ワーカーの多くはすでに次のプロジェクトに移行しているため、新規採用者に企業文化、プロジェクト、一緒に働く部署について理解してもらうオンボーディング、オフボーディングを実施することは、仕事を円滑に進めるうえで大きな役割を果たすのです。
そしてギグ・ワーカーとは将来また一緒に仕事をする可能性があることも念頭に置いておく必要があります。上司は、雇用中あるいは将来雇用するギグ・ワーカーとともに、有益な再雇用プロセスを設定することで、ギグ・ワーカーが再びその職場で働くことになった際に、部門や企業の重要な事項をキャッチアップし、迅速に職場に溶け込むことができるようになります。
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