AIやロボットの普及があまりに速いペースで広まることになれば、新たな雇用の受け皿が整う前にホワイトカラーを中心にしだいに余剰人員が膨らみ、失業率が上昇傾向に転じる時期は思ったより早まることになるでしょう。
2025年には失業率が5.8%になる?
日本の労働力人口の減少率だけを見れば、10年後も20年後も失業率が上昇する可能性は極めて低いと考えらます。しかし、企業が一斉にAI・ロボットの導入を加速する流れのなかで、2030年までに労働力の2割がAIやロボットに徐々に代替されていった場合、東京オリンピック終了後の2020年代初めには失業率が上昇傾向へと転じ、2020年代後半には5~6%程度(2018年前半の失業率2.4%の2倍を超える水準)まで上がり続けることも十分に想定できるというわけです。
実際のところ、雇用の現場に精通しているリクルートワークス研究所の試算によれば、AIやロボットによる代替が進むにつれて失業率が上昇に転じることになり、2025年には最大で5.8%まで上昇する可能性があるということです。
この数字は過去最悪だった2009年7月の5.7%を上回る水準であるので、将来の人手不足まで懸念している日本で、いかに雇用が悪化していくのかという情勢を指し示しているのです。社会保障システムを維持するために、高齢者雇用を増やさなければならない日本にとっては、雇用環境の悪化は大きな障壁となるかもしれません。
たとえ人口が減少していく日本であっても、生産性を上げていけばGDPを保つことができるというのは、あくまで2000年以前に通用した考え方であります。2000年以降の技術革新の質が過去のケースとは異なる次元にあることを考えると、むしろ国民全体で見た場合には生活水準の悪化という副作用をもたらす可能性が高いと思われます。
現在の経済学を支える主たる理論は、その多くが戦後の圧倒的にものが足りない時代に確立されたものです。言い換えれば、旺盛な需要があって市場の成長余力も大きい時代につくられた理論なのです。さらにいえば、現在のような「破壊的イノベーション」が起こることなど、とても想定してはいなかったのです。もはや時代遅れとなった経済学の教科書どおりの発想をしていては、とんでもないしっぺ返しが待っていることを意識しておく必要があるのではないでしょうか。
新刊『AI×人口減少 これから日本で何が起こるのか』においては、これからの10~20年を見据えて、私たちの仕事、収入、社会がどのように変化していくか、実証的なデータを基に解説しています。ご覧いただければ幸いです。
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