とりわけ、団塊世代が定年を迎え始めた2012年以降は労働力人口が大幅な減少傾向にあるのに加え、2017年以降は世界的な景気回復により輸出の増加が重なったため、人手不足は深刻化の一途をたどっています。その結果として、2018年の前半(1~6月)の失業率は平均で2.4%と低水準で推移しているなかで、多くの企業がAIやロボットで徹底した効率化に取り組むのは、必然の流れであるといえるわけです。
今の日本では労働時間が長い割にはその成果が小さく、特にサービス業ではその傾向が著しいといわれていますが、これは裏を返せば、日本の生産性は改善する余地が大きいということを表しています。
そのような日本の現状を鑑みて、経済学者の多くが「人口減少をバネに生産性を高めていけば、日本は経済成長を続けることができる」と主張するのは、決して間違っているとは思いません。ただし、このような主張を際限なく肯定して推し進めることがあれば、日本の雇用にとって非常に由々しき結果を招きかねないと心配しているところです。
AIやロボットが「人余り」の状況をつくってしまう可能性
というのも、私が大いに心配しているのは、AIやロボットが人手不足を補うというレベルを超えて、人手が大幅に余るという状況をつくりだしてしまうのではないか、ということだからです。
AIの急激な進化に伴って自動化のスピードが格段に上がっているなかで、IoT(身のまわりのあらゆるモノがインターネットにつながる仕組み)によって農業、建設、運輸、医療・介護などの産業からデータが得られるようになり、今までは不可能だとされていた水準での自動化が進もうとしています。人の認知機能や経験・思考が不可欠な複雑な処理、たとえば農場の管理、建設現場の管理、自動車の運転、医療の画像診断、老人の健康管理などの業務で自動化が実現されつつあるのです。
そのうえ、AIの活用は大企業だけでなく、中小企業のあいだでも広がってきています。アマゾンやマイクロソフト、IBMなどのIT大手が開発したクラウド上の技術をベースにして、ベンチャー企業が生産・販売・会計などの基幹業務に特化したサービスを低価格で提供できるようになったためです。これまでITへの投資を躊躇していた中小企業のあいだでも、コスト的に利用するハードルが低くなってきているのです。日本の雇用の約7割を占める中小企業にAIの活用が広がり始めたことは、日本全体の人手不足を早い段階で解消する大きな要因となるでしょう。
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