十勝産小麦を使ったパンは他と何が違うのか 生産者と製造業者が支えるブランド力
病気や収量、美味しさを追及する育種機関から→小麦生産者→集荷→製粉→加工者→消費者と麦のバトンを渡さないと消費できない作物、「美味しいパンのその先に北海道十勝の小麦畑を感じてくれたら」と前田さんは想いも膨らんでいる。
十勝産にこだわるパン屋、満寿屋商店の挑戦
帯広に前田農産の小麦を使用したパンを製造・販売するパン屋があると聞き、訪ねた。1950年創業の「満寿屋商店」。店では、小麦粉のほか、酵母や水、乳製品などパンづくりに必要な材料はすべて十勝産だという。店内には生産者の写真がずらりと並ぶ。まさに、十勝の生産者とつながるパン屋なのだ。
満寿屋商店は、第1号店となる「満寿屋商店 本店」を帯広に開店し、その後、十勝地方を中心に支店を広げ、地元では知らない人のいないパン屋にまで成長した。店舗で提供されるパンはすべて十勝産の小麦粉を使っている。
いまでこそ、国産小麦粉にこだわるパン屋は少なくない。しかし、満寿屋商店が抱く「十勝産小麦粉100%」の思いは、20年近く前から始まっている。
「十勝産小麦を使うようになったのは1989年ごろ。当初は、輸入小麦を使うのが常識。パンはもともと海外の食べ物という考えもあり、業界内でも国産小麦への関心はほとんどありませんでした」
そう話すのは満寿屋商店の代表を務める、杉山雅則さん。「十勝のパン屋なら十勝の小麦粉を使うべきだ」と、固い決意のもと、親子二代に渡る取り組みは、2012年にとうとう実現する。
原材料の産地を限定することは相応のリスクがともなう。十勝の小麦が不作だった場合、その影響が店の経営にも及んでしまうからだ。小麦粉の切り替えは、工房をあずかるパン職人からも不満が漏れた。
「十勝産小麦100%への切り替えは非常に悩みましたよ。踏み切れたのは、今後20年くらいは安定供給の目処がついたから。また、国産小麦と輸入小麦で製パン技術が異なり、質にバラつきが出やすい国産小麦は、高度な技術が必要になります。技術的な切り替えも長い時間を有しました」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら