原料すべて十勝産のパン屋、東京進出のワケ 小麦も十勝産!満寿屋商店の勝算
「国産小麦を使っています」「地元野菜を使っています」――。最近、パン屋に行くと、以前より国産小麦や地元で獲れたモノを材料に使っているところが増えているような気がしないだろうか。小麦粉、水、塩、酵母で作ったフランスパン、そこへ砂糖、バターやマーガリンと、脱脂粉乳や牛乳など乳製品を加えた食パン、バターを練り込んだクロワッサン……。実際に、さまざまな材料からできているパンを、地元産で賄う「地産地消型」パン屋が増えている。
昨年11月、東京・都立大学に東京初の店舗をオープンした北海道・帯広地盤の「満寿屋商店」は、そのトップランナーともいえる存在だ。
農家との「共存共栄」が目的
「十勝産小麦100%」「十勝帯広名物!白スパサンド」「十勝産の5種類のチーズをたっぷり使用」「十勝産小豆使用」――。昨年、11月東京・都立大学に東京初の店舗をオープンした北海道・帯広地盤の「満寿屋商店」の店内に並ぶ商品には、これでもか、とばかりに十勝産原料を使ったことがアピールされている。
実際、満寿屋商店は現在、小麦粉をはじめ、材料のほとんどを地元で賄っている。1950年に、杉山健一初代社長が創業した際、地元農家との共存共栄を目指したのが始まりだ。地元農家が作ったものをパンに加工し、地元で食べてもらおうと考えたのである。
小豆や砂糖、バターなど、地元の十勝地方で賄える材料は多かったが、メインの材料である小麦粉は地元産ではなかった。なぜなら、日本では戦後、パンにはほとんど米国とカナダ産の小麦が使われてきたからだ。この「問題」に向き合ったのが、息子で2代目の杉山健治社長。1980年代のある日、パンを買いに来た農家に「うちの小麦は、ここのパンに使われているのかい」と聞かれたからだった。
その頃、北海道は全国の小麦生産の半分を占める穀倉地帯に成長し、十勝地方は、その中でも有数の産地になっていた。ところが、「調べたところ、十勝の小麦は材料の小麦粉にほとんど使われていないことが分かった」と、2代目の息子で4代目の杉山雅則社長は言う。
2代目は、地元農家や製粉業者の協力を得て、地元産小麦の使用を増やそうと奔走。そして1987年ごろから、北海道産小麦を使った商品開発に取り組み、1990年から一部商品で100%北海道産小麦を使ったパンを売り始め、まずは北海道産小麦の使用を増やしていく。小麦生産が安定しないことから地元産で賄うには時間がかかり、ようやく「十勝産小麦100%使用」とうたえるようになったのは、2012年のことだった。
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