原料すべて十勝産のパン屋、東京進出のワケ 小麦も十勝産!満寿屋商店の勝算

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満寿屋商店が十勝産にこだわったパンを引っ提げ、東京に進出したのは昨年11月。そこにはTPP問題がきっかけで、食料輸入問題への危機感が高まったことが影響している。

「輸入自由化でいちばん影響を受けるのが、補助金をたくさんもらっている北海道です。十勝はその典型的な農業地帯の1つ。十勝が衰退すれば日本の食料自給率は低下し、農業崩壊にもつながりかねない」と雅則社長は話す。

「どの農産物も非常に品質が高いのに、原料供給地で終わっている」(雅則社長)十勝地方が、パンの材料産地であるというリアリティを消費者に持ってもらおうと、東京に進出したのだ。当初は首都圏に住む十勝出身の来店客が多かったが、最近は9割が周辺在住の顧客となり、定着しつつある。

1日300~400人が訪れる

同社はまた、収穫前に雨に濡れて発芽した小麦を使う取り組みも始めている。従来、発芽した小麦はパンだねを膨らませる力が弱いためパンの材料には使えない、とされてきた。それを、東京・世田谷区の有名パン屋、シニフィアンシニフィエの全面協力を得てレシピを開発し、「甘熟小麦ブレッド」(税込み1個450円)として売り出したのだ。

東京都立大学の店舗はシックな外観だ(撮影:今井康一)

パンだねを72時間かけて熟成させた、小さいけれど甘いパンには、リピーターがついている。そのほか東京では、スタンダードな食パン「麦皇」(300円)、「こしあんぱん」(130円)、5種類のチーズを使った「とろーりチーズパン」(380円)などが人気。今のところ、1日の来客数は300~400人に上り、客単価は900円程度。地元都立大以外に「埼玉や千葉から来る人もいる」(雅則社長)というから滑り出しは上々だ。今後は、年2店ペースで東京で5店出店を目指したいという。

満寿屋商店が、十勝産をうたうことで支持されるのは、2000年代以降、国産品に対する消費者のイメージが大きく変わったからだ。それは若い世代のライフスタイルと相まって、1つの流れを作りつつある。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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