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清く美しい「テッペンを目指さない」生き方 沢木耕太郎「美しい人生」より

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―内藤さんはいい人だった。

すべての人がそう思ってくださっていると思います。男と女の関係の仲で、あの人はいい人だったと言われるのはあまり名誉なことではないと言われたりします。しかし、このような世の中で、利朗のように「いい人だ」と言われつづけることができたというのは、ほとんど奇跡に近いことのように思えます。

生涯をかけて生み出してきたもの

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先頃亡くなった私の知人の女性がこんなことを言っていたことがあります。男には「格」がある。名声でも富でもない。人間としての「格」が高いか低いかだけだというのです。

利朗は人間としての「格」が高い男だったと思います。

内藤利朗は死にました。

奥さんの美栄子さんが、最後に近く、「息をして」と呼びかける声には胸をつかれました。

僕もまさか彼が自分より先に逝くとは思ってもいませんでした。僕は、心のどこかで、永遠に彼に頼み事ができるものと思っていたような気がします。一度くらい、利朗から無理な頼み事をされてみたかった。

しかし、これから、僕はことあるごとに、彼がいたら、いてくれたらと思いつづけるでしょう。そして、それは、ここに参列してくださった皆さんにも必ず訪れる感慨だと思います。

―内藤さんがいてくれたら。

たぶん、内藤利朗が生涯をかけて生み出してきたもの、それはそうした皆さんの思いだったという気がします。

内藤利朗の一生は、とても美しいものだったと思います。

2013年9月10日
沢木耕太郎
(13・9)

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