成毛さんがベーシックインカムを主張した 『トーキョー金融道』同窓会 第6話

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2002年、東洋経済発刊の月刊誌『金融ビジネス』に、人気連載があっ た。その名は「東京金融道」。インスパイア社長(当時、現在は取締役ファウンダー)の成毛眞氏が、「金融のプロ」である藤巻健史氏(フジマキ・ジャパン代 表)と松本大氏(マネックス証券社長)に「金融の掟」を教わる、という趣旨の鼎談企画だった。この連載は、2003年刊行の『トーキョー金融道』に結実している。
2013年10月某日、その伝説の3人と担当編集者2人(日経BPの柳瀬博一さん、東洋経済のヤマダ)とが10年ぶりに集結。藤巻氏は7月の参院選挙に当選したことから、その仕事っぷりを見るためにも、集合場所は参議院議員会館とした。

なぜ藤巻さんは政治家になったのか。松本氏、成毛氏が考える日本を復活させるための秘策とは? 改ページなしでどんどん読み進めるスクロール絵巻を、6話に分けてお届けします。

第5話から続く・・・・

ヤマダ:その手の都市間の競争が激しいですね、今。ベルリンとか、北京とかもやっている。

松本:ロンドンもやっていますね。

ヤマダ:だから東京もやればいいということですか?

松本:日本は特別ですよ。東京だけではなく、京都との組み合わせが提供できる。安全で文化もあり、料理もおいしい。世界的にみても十二分に戦えます。小さなヨーロッパの一都市は全然話にならない。対抗できるのはロンドン、ニューヨークだけでしょう。でも、ニューヨークでは子どもが夜に歩いて友達の家に行くなんてあり得ないわけです。でも東京ではいくらでもできます。これは、すごい価値です。

ヤマダ2020年のオリンピックに向けてもそういうタレントが集まる街にすればいい、と。

オリンピック以外にいろいろと

松本:そう。スポーツだけじゃなくて、いろんなことの祭典をやればいいと思うんですよ。音楽とか、映画とか、料理関係とか、あらゆる祭典をできますよね。

ヤマダ:藤巻さんは、ちょっとオリンピックって似合わないですよね。

藤巻:一応、僕は文教委員会なんだよ、今。スポーツも文教委員会の担当。

ヤマダ:文化的な政治家ということで(一同爆笑)。

藤巻:なんでみんなそこで大笑いするの(笑)。

ヤナセ:いや、文教族なわけですね。藤巻さんは。

藤巻で、また文化とはかけ離れた話になるけど、ちょっと言わせてもらうとね、最近、所得税はフラット税制がいいんじゃないかなと思いだしたのね。

松本:フラット税制。

藤巻:低所得者という定義がよくわからないけど、低所得者と認定されるとありとあらゆることが優遇されるわけですよ。なんとか手当をもらったり補助金をもらったり医療費がタダになったり・・・・・。その手当等のおかげで所得税を払っている人より豊かな生活が出来ちゃったりして。そうでなくてもネットの収入では働こうと働かまいと同じになったりする。累進課税と補助金の組み合わせだからです。

それってまずいよな、と思うと解決策としては、税金はすべてフラット税制にして、所得の低い人には補助金等で調整する。それもありかな?と思い始めたわけ。なにはともあれ、働こうと働かないと結果平等になる日本の税制は行きすぎだと思うんですよ。

成毛:それをいうならベーシックインカムですよ。要するに、国民全員に30万配るんです、毎月、全員にです。もうどんなお金持ちだろうがなんだろうが30万円。それとは別に累進課税をしちゃうんです。だから何を言っているかっていうと、全員もらうもんだから最低の生活保護もらっている人も、なんもなく、一律の生活が必ず保障できるわけ。そういう意味なんですよ。

松本:セーフティネットを張るということですよね。

成毛:完全にセーフティネット張ってしまうわけ。1億3000万人に逃さず、30万円ずつもらって。

年金制度よりずっとマシ

松本:生活保護にもインセンティブをつければいいんですよ。もっと働いたら2割増えるという具合に働けば増えるようにする。今は愚民政策と一緒で、これ以上働いたらあげないからっていうから、もう働くのやめたってなる。

農家もそうですよね。農業に対する補助金も愚民政策。要するにプロダクションさせないためにカネを配っている。そうじゃなくてやっぱり上乗せしますよっていうふうにしたほうが。

成毛:それをやるのであればベーシックインカムでいいでしょう。働けば働くほど自然にインセンティブがあるわけで。

松本:同じことですね。

成毛:それだと、みんなやる気になるじゃないですか。もうパートに出れば30万円だけでなくプラス10万円の収入になるんだから。

松本:愚民政策というか、プロダクションをさせなくさせるような政策はなくしたほうがいいですよね。

成毛:そうそうそう。で消費をさせない政策じゃないですか。一方でね、車買っちゃダメとか、使い道を縛っている。

ヤナセ:そうですね。でリスクテイクしたほうが損をするっていうのが前提になっているんですよね。ちょっと働いたりすれば損をする。

松本:変えちゃってくださいよ、もう。

藤巻:だからさ、変えるの大変なんだよ~。だから、さっき言ったようにさ・・・・。

松本:ガラガラポン。

成毛:そういう時に、そういう設計にしてしまえばいいんだよね、すべて変えてしまえばいい。

松本:ガラポン大臣みたいな。

藤巻:年金だってやっぱり確定拠出にしないとダメじゃん。

成毛:さっきのね、僕の言ったベーシックインカムはね、こういうことなんですよ。年金はいらない。

制度設計を考えてみた

松本:最低保障するから。

成毛:最低保障しちゃうんだから、関係ないからね。そうすると今年金の残高は700兆円がきてバーンと国庫に入る。

松本:いきなりバランスシートが改善する。

藤巻:そうか、そうか。面白いね、それ面白いね。

成毛:きれいに消えてしまう。それであとはそれを国債と転換していくだけです。ガーガラガラガラガラ…。

松本:でも700兆円をなくしたとしても、30万円ずつ支払っていく将来債務ができるから、それはたぶん数百兆円ありますよね。

成毛:それはあるんです。あるんです。

松本:いってこいかも。

ヤマダ:でもハンドリングコストが劇的に減りますよね。

藤巻30万円かける1億3,000万人って幾らなんでしょうね。

松本39兆円ですかね。それが12カ月だから468兆円。これが毎年でしょ。

成毛13000万人じゃなくてもらうのは6000万人かな。年300万円かける6000万人だとどうだろう。

松本180兆円ですね。先生、そんなに金はないでしょう。

成毛だけど、関係ないですって。所得税とか消費税で取るんだからね。

松本:生活保護を受けられなくなるから、これ以上は働くのをやめようっていう人がいなくなるということですよね。

成毛:そんなに大した金額じゃないでしょ、180兆円って。

松本:でも、年間ですから。2年で360兆円ですからね。4年で720兆円ですよ。

成毛:そうだけど、考えてみたらアメリカ、ヨーロッパで平均的な消費税率って15%くらいでしょ?今、日本のGDPってどのくらいでしたっけ? 

松本500兆円ですね。

成毛:500兆円ですよね。そのうち15%だとすれば75兆円ですね。残りの足りない部分を所得税とかでやれば、180兆円にはなるかな。

松本30万円はちょっと多いので少し減らして年間のベーシックインカムの支払いを150兆円くらいにすればいけるかもしれない。

成毛:ポイントとしては、社会保障費が全部ないっていうこと。これはすごいですよ。そのコストがなくなる。

松本:年金という歴史上、永続できることを証明されていない仕組みから逃げられるっていうのいいですよね。

成毛:そうそうそう。

ヤマダ:人口減少に基本的に対応できない仕組みですものね、今の年金の仕組みは。

成毛:それに支払いの方法としては積み立ててもいいし、そのまま支払ってもいい。

ヤマダ:生きていればそれだけで30万円もらえるっていうことが一番単純なベーシックインカムの方法なんですね。

松本:でもそうなると延命処置の議論も必要。ちょっとよく考えたほうがいいですよね。みんな100歳とか110歳とかなっちゃうと大変なんですよ、胃ろうなどを使うと。そこは普通にもう自然になったほうがいいんですけどね。

藤巻:でもなんとなく、それって僕が言っているガラガラポンよりも過激だな。僕のほうがずっと普通のことを言っているように思う。

成毛:ハイパーインフレを待っているよりも、落とし所としてはまともですよ。

最後に記念撮影。カメラの砲列が!

ヤマダ:すみません。こんなようなソファー(『トーキョー金融道』の表紙を見せながら)って、そっちの部屋にあったりしますか。

 藤巻さんの秘書(長男):そこにあります。

ヤナセ:この時はカッコいい恰好ですからね。

松本:いや、今もカッコいいですから。

藤巻:なんかすごいこれ傲慢な恰好になっちゃうね。

ヤナセ:この机は動かしちゃいましょう。

ヤマダ:そうしましょう。あ、ちょっと松本さん。手をまっすぐにしてもらえます?

松本:笑っちゃいけないのかな。

ヤマダ:同じようにするためには笑っちゃいけないんです。

藤巻:偉そうにしてください。

カメラマン:ではいきますよ。こっちを見てください。

ヤマダ:あれ。これ(本の表紙)は足がずいぶん大きいから広角レンズですね。広角じゃないと、この表紙と同じようには撮れないのでは。

カメラマン:持って来ていますよ。向こうに置いてあるんで広角レンズを持ってきます。

成毛:あ、広角持ってきているんだ。何ミリ?

カメラマン15ミリです。

成毛15ミリってけっこう広角だよね。

ヤマダ:成毛さん、ちょっとオナカを引っ込めてまっすぐ座ってください。

ヤナセ:カメラのレンズをみてくださいね。こっちです。そうそう。あ、手をちゃんとあごの下に置いてください。

藤巻さんの秘書:こっちのカメラも見てください。

松崎さん(マネックス広報):すみません、こっちのカメラも見てください。

ヤナセ:はい、ちょっと下から煽りますけど、そのままレンズを見ておいてくださいね。何枚か撮りますんで。はい、いいですね~。

ヤマダ:あ、それはオリンパスの一眼レフですね。OM-1ですか?

ヤナセ:そうそう。これは小さくていいんですよ。

・・・・・そして撮影は続いた・・・・

<完>

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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