「極論」バカが、今のニッポンを蝕んでいる AI失業論、地方消滅論、TPP亡国論はやめろ

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――このところ、日本大学のアメリカンフットボール部や日本体操協会をはじめ、スポーツ団体で不祥事が相次いでいます。スポーツ団体の閉鎖性と不祥事は関係ありますか。

昨今連発するスポーツ界が、まさしく閉鎖性と不祥事の暗部をあぶり出した象徴といえます。アマチュアスポーツ、プロスポーツに限らず、「先輩に絶対服従」「常識(コモンセンス)が通用しない特殊な閉鎖社会」に位置するある種のスポーツ界は、社会通念上の一般世論では刑事事件、民事訴訟の対象になるような暴力、体罰、パワハラ、セクハラなどが平然と行われている。

なぜか。誰も外部から監視をする人間がいないし、いないとわかっているからです。外部から誰も監視せず、監査をする体制がないなら、もし徳のない治世者がトップに立つと、やりたい放題になる。そして当然、監視や監査がないので、やりたい放題を是正するという内部改革の機運の目も潰される。上場している株式会社では、まず起こることがない、異常な空間です。

閉鎖された空間だと人間は豹変していく

『日本を蝕む「極論」の正体』(新潮新書)(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

有名なものに「スタンフォード監獄実験」というものがあります。これはアメリカのスタンフォード大学が実際に善良な市民の参加を募って実験した心理実験です。無作為に抽出された被験者が、それぞれ「看守役」「囚人役」となる。最初は和気あいあいとしているが、時間が経つと、「看守役」に配置された人間の言葉が粗暴になり、「囚人役」の被験者に対して威嚇的になる、という結果があらわになりました。

刑務所という外部からの監視や監査のない、閉鎖された極端な空間の中では、指導的立場に立つ者や物理的に有利に立つ者がどんどんと居丈高になり、暴力的なそぶりを見せるようになる。この実験は見逃すことのできない、人間心理の本質をついています。

つまり本来、善良な人間でも、外部から監視や監査のない閉鎖された空間では、その人は豹変し、社会通念上「極論だ」「異常だ」と思われることが、普通のことになっていくのです。昨今のスポーツ界は、まさにこのスタンフォード監獄実験の実例のようであり、興味深くもあり、慄然と肌に粟を生じる部分もあります。

いずれにしても、極論は今、日本を蝕んでいるのです。

田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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たみや ひろゆき / Hiroyuki Tamiya

明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日経ラジオ社、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクに。2007年、株式雑誌『オール投資』編集長就任。2009年就職・採用・人事情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げ編集長となる。取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職

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