「極論」バカが、今のニッポンを蝕んでいる AI失業論、地方消滅論、TPP亡国論はやめろ

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――「日本会議」についても言及していますね。

第2次安倍政権が盤石なので、何かウラがあるのではないかと疑う人は、少なくありません。なぜ安倍政権が存続しているかと言えば、単純に選挙によって有権者から信任を受けているからにすぎませんが、何かしらの陰謀を見いだそうとする人が多いようです。

左翼の間では「日本会議陰謀論」という極論が信じられています。著述家の菅野完さんが著した『日本会議の研究』(扶桑社新書)がベストセラーとなり、日本会議という団体が有名になりました。この本の出版以来、日本会議と安倍政権を結びつけて説明する人が増えています。

たとえば、「閣僚の○○は日本会議のつながりで議員になった」「安倍政権そのものが日本会議に牛耳られている」などと、本気で主張する人がいるのです。

保守界隈に身を置く私から見れば、こんな陰謀論は、うそっぱちの極論にすぎません。そもそも著者の菅野氏が巻末にはっきりと「日本会議はそれほど大きな団体ではない」と明記しています。つまり著者自らが日本会議は外部に対してあまり影響力がないことを認めているのです。しかし、外部からの監視や監査がなく、競争のない閉鎖的な社会の居住者は陰謀論的な極論を信じ込んでしまいます。

右も左も見るために靖国神社へ毎年行く

――日本会議に政権を牛耳る力はないのでしょうか。

古谷 経衡(ふるや つねひら)/文筆家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。インターネットとネット保守、若者論、社会、政治、サブカルチャーなど幅広いテーマで執筆評論活動を行う。近著に 『女政治家の通信簿』(小学館新書)、『愛国奴』(駒草出版)、『「道徳自警団」がニッポンを滅ぼす』(イースト新書)、『「意識高い系」の研究』(文春新書)など(撮影:梅谷秀司)

私は毎年8月15日に靖国神社に行きます。右翼と左翼の衝突で騒然とした雰囲気になりますが、大村益次郎の銅像脇の広場では、日本会議の「8・15」集会が開催されています。最初はずいぶん、高齢者の多い集会だと思っていたのですが、実はこれが日本会議の集会でした。

また日本会議のメンバーが多数参加するイベントにも招待されたことがあります。都内有名ホテルの大会場に入る否や、視界にまぶしいものを感じました。なんと参加者のほとんどに頭髪がなく、照明が頭皮に反射して光っていたのです(!)。

全員が高齢者だったわけではありませんが、圧倒的に高齢者が多かった。そんな彼らが「中国の脅威が云々」という話を頷きながら聴いていました。頷いているように見えて、実はこっくりこっくりと眠っている人もいました。傍から見ていて、演説を聴き続ける体力があるのかどうか、彼らの体調が心配になりました。こんな老人たちが安倍政権を牛耳る黒幕とは思えません。まず体力的に無理でしょう。

日本会議は2016年、参院選全国比例区で山谷えり子前拉致問題担当相を支援し、山谷さんは25万票を獲得しました。仮に、これらの得票のすべてを日本会議による効果だとしても、この程度の力しかありません。同じ選挙で日本共産党は600万票以上を獲得しました。選挙結果から見て「政権を牛耳る力」などないことは明らかです。

――本書ではさまざまな極論を解説していますが、特に強調したい極論はどれでしょうか。

極論の事例でぜひ取り上げたいのは「TPP亡国論」です。TPP亡国論は左翼と右翼の両極からわき起こりました。1つの政治問題に対して、左翼と右翼が同じ姿勢を取るのは、現代政治史上極めてまれだと思います。

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