日本共産党の主張は「TPPでアメリカの巨大なグローバリズムに日本がのみ込まれ、日本がアメリカのような弱肉強食のグローバル資本主義の国になってしまう」というもの。一時期は共産党系の医療機関である民医連(全日本民主医療機関連合会)加盟の病院に行くと、TPP反対のポスターが貼ってありました。
「TPPに加盟すると医療現場が混乱し、医師や看護師が外国人になってしまう」という極論もありました。仮にTPPが日本市場を取って食うものだとしても、なぜTPPによって外国人が医療現場に入ってくるのでしょうか。医師と看護師が日本語の話せない外国人に替わるというには、SF的妄想でしかありません。
一方、右翼陣営は、「TPPで皇室が滅びる」「アメリカ同様の訴訟社会になってしまう」ということをしきりに主張していました。
私にはなぜ、TPPで皇室が瓦解するのか、まったくわからない。自由貿易と天皇制はまったく関係ありません。もし、貿易が自由化される程度のことで、少なくても千数百年続いてきた皇統が断絶するというならば、皇室をあまりに脆弱に見すぎた、自虐史観ではないでしょうか。自虐史観は右翼が最も嫌っていたはずです。
実は日本のほうが訴訟社会に向かっている
よくアメリカは訴訟社会と言いますが、言われているほどの訴訟社会ではありません。マクドナルドのコーヒーでやけどした女性が裁判で3億円の賠償金を得たといったニュースにより、アメリカはとんでもない訴訟社会と思われていますが、実際にそんな国ではありません。富裕層は顧問弁護士と契約しているものの、ほとんどのアメリカ人は顧問弁護士など抱えていません。
実はTPPに関係なく、日本は訴訟社会になりつつあります。法テラス(日本司法支援センター)が無料法律相談や必要に応じて、弁護士や司法書士の費用を立て替えています。
そもそもトラブルを公明正大に訴訟で解決することの何がいけないのでしょうか。訴訟社会はネガティブなイメージで語られることが多いですが、民事的係争を裁判官の前で解決せず、私人が実力行使で解決する社会のほうがよほど危険です。そこに反社会的勢力が入り込むすきがあります。訴訟社会のほうが健全な民主社会ではないでしょうか。
TPP亡国論という極論で、共産党は党勢拡大としんぶん赤旗の拡販を図りました。右翼も支持者を拡大し、イベント開催や書籍出版などで利益を得ました。極論は”恐怖商法”につながるのです。
――ドナルド・トランプ大統領が就任して、アメリカはTPPへの不参加を決定しましたね。
日本国内のTPP反対派は、右派も左派も大きな肩すかしを喰らいました。アメリカが離脱するということは、実は日本にとって有利な条件だったということです。反対派は「TPPでアメリカが日本を取って食う」と主張していましたが、実はトランプ大統領が「日本がアメリカを取って食う」とびびっていたわけです。トランプではなく、ヒラリー・クリントンが大統領に就任していたら、アメリカはTPPに参加していたでしょう。日本としては残念な結果になってしまいました。
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