元日本代表・市川大祐が馳せる指導者の想い 引退後、日々湧き上がる勝負の世界への渇望

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「長友選手と乾選手の連携っていうのは、もし自分が対戦相手の右サイドバックで守っていたらかなり捕まえづらいんだろうなと思っていました。乾選手が中に入って、大外を長友選手が使うという連携がよくできていたし、かみ合わずにギクシャクすることもなかった。

相手に的を絞らせず、ピッチを広く使っていたんで、そういう強みを出せたことが日本代表ベスト16進出の原動力の1つになったのかなと感じます」

しかしながら、ロシアの日本は結果的に1勝1分2敗と負けが先行している。しかもベルギー戦では2-0からひっくり返されるという屈辱も味わった。

決勝トーナメント1回戦でベルギーに逆転負けを喫した日本代表(写真:松岡健三郎/アフロ)

市川自身も16年前のラウンド16・トルコ戦(宮城スタジアム)のピッチに立ち、一発のセットプレーで辛酸をなめ、号泣した経験があるからこそ、この負けを「いい戦いだった」とアッサリ流してはいけないという思いは強い。

ロシアの経験を生かして先につなげるしかない

「正解は何だったか……という問いの絶対的解答はない中で、勝つための可能性をより高める判断やプレーってものが大事だと僕は思うんです。(日本がベルギーに決められた)最後の高速カウンターの場面を取ってみても、一つひとつのプレーにいろんな意見はあるけど、それだけ一人ひとりにやれることがあったということ。日本サッカー界として経験を生かして、先につなげていくしかない。

自分も1998年から2002年にかけて4年間積み重ねたものがあったけど、そういう努力をこの先、代表を担う人たちもしなきゃいけない。もちろん指導者になった自分もその力になれるように力をつけたい、まず来年は、A級ライセンスを受けに行って、幅広くサッカーを知る努力をするところから始めたいです」

新たな人生を歩み始めた市川大祐がこの先、いったいどんな道をたどっていくのかは非常に興味深いところ。日本代表への貢献はもちろんのこと、自身が大きく育った清水エスパルスの強豪復活にも力を貸せるような指導者に成長することを、多くの人々が待ち望んでいる。

(文中一部敬称略)

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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