日本の「移民政策」を成功させる真っ当な方法

政府の外国人労働者受け入れ拡大策は万全か

一方、今年7月24日、「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」が開かれた際に示された総合的対応策(案)では、日本で働いたり学んだりする外国人の処遇や生活環境などについて、国が一定の責任を負うべきことを明示した。

また、「外国人との共生社会の実現に向け、外国人が日本人と同様の公共サービスを享受し、生活できる環境を整備しなければならない」ことが触れられている。

社会統合政策は日本では「多文化共生政策」とも呼ばれ、その内容は外国人支援策と共生社会づくりに大別される。

外国人支援策は生活環境の整備と就労環境の整備に分かれる。この中で特に難しいのは、生活環境の整備である。生活環境は多分野にかかわり、府省庁横断的な取り組みが必要となるため、課題も多岐にわたる。

たとえば、学校教育の分野であれば、第二言語としての日本語を教える教員の専門性を高めるために、免許制度が必要である。定住外国人のための日本語教育を核とした社会統合プログラムも重要である。医療の分野であれば、全国的な医療通訳制度の整備が欠かせない。

他方、共生社会づくりは、政府にとって初めて本格的に取り組む課題である。総合的対応策(案)では、各地において共生施策の企画立案に資する意見聴取などの機会を設けるとある。外国人の受け入れを始めてからも、新たな問題が次から次へと起きる可能性を踏まえると、常設の諮問会議を設置したほうがよいだろう。

中長期的観点に欠ける政府案

総合的対応策(案)では、偏見・差別のない社会の構築へ向けた体制づくりも言及されている。だが、外国人に対する差別、特に入居差別や就職差別は深刻である。

外国人住民調査報告書(法務省、2017年)でも、差別の実態が浮き彫りになっている。外国人労働者が働きやすい環境を構築するためには、今後、外国人などに対する差別を禁止する法律の制定が欠かせないだろう。

このように、社会統合政策を進め、社会の分断を防ぐためには、中長期的観点に立った体制整備が欠かせない。外国人労働者の受け入れは一度門戸を開けば、人手不足が続く限り、再び閉じるのは難しいからだ。

だが、総合的対応策(案)では、いずれも今後数年間に行われる施策が示されているだけで、中長期的観点に立った体制整備とは言いがたい。

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