日本の「移民政策」を成功させる真っ当な方法

政府の外国人労働者受け入れ拡大策は万全か

外国人住民の多い自治体は、この十数年の間に、多文化共生の条例や基本指針・計画を策定し、担当部署を設置して取り組んできた。近年では、浜松市(人口81万人)のような大都市から広島県安芸高田市(人口3万人)のような小規模自治体まで、外国人住民を支援の受け手ではなく、グローバル化や地域活性化の担い手に位置づける取り組みが広がりつつある。

これを筆者は「多文化共生2.0」と呼んでいる。外国人支援を中心とした取り組み(多文化共生1.0)から進化した第2ステージの多文化共生という意味である。特に浜松市は、多様性(ダイバーシティ)を活かした都市づくりをテーマに欧州評議会が進める「インターカルチュラル・シティ」のネットワークに昨年、アジアで初めて加入し、国際的にも注目されている。

基本法制定が必要

政府は、「外国人材の活用」を推進しつつ、「移民政策とは異なる」ことを強調している。新しい政策を「移民政策」と呼ぶかどうかにかかわらず、外国人労働者の受け入れを成功させるためには、社会統合政策を進める必要がある。

そのためには、まず、多文化共生社会のビジョンを描かなければならない。日本ではこれまで、外国人受け入れ全体の基本理念や政策の方向性が定められてこなかったからだ。

国と自治体、企業や市民団体などがビジョンを共有し、連携・協働して、その具体化に取り組むためには、多文化共生を推進する基本法の制定と担当組織の設置が不可欠である。翻って政府の新方針には、多文化共生を推進する法律の制定が含まれていない。

国や自治体が取り組む男女共同参画施策、障害者施策、高齢社会対策などには、それぞれ施策を推進する基本法がある。それと同様に「多文化共生社会基本法」の制定が必要なのである。

「多文化共生社会基本法」の目的は、人権尊重や社会参画、国際協調といった社会統合の基本理念を定め、国や都道府県に基本計画の策定を義務づけ、施策の推進体制を整備することにある。基本法を制定してこそ、国と自治体、企業や市民団体等との連携・協働も進み、地域社会の取り組みが一層効果的なものとなるだろう。

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