「親という病」はなぜスポーツ界に蔓延するか 常軌を逸した「えこひいき」問題から考える
『伸ばしたいなら離れなさい』の著書があり、少年サッカーで延べ50万人を指導してきた京都サンガ元育成普及部長の池上正さんは「パワハラをしてしまう人は、厳しさのとらえかたを履き違えている」と話す。池上さんがジェフ千葉で中学生のコーチをしていたころのことだ。
「もっと叱ってください」とか「もっと怒って教えて」と、保護者に言われた。自主性を重んじて、自分で考えて判断する力を養うコーチングが理解されていなかった。そこで、保護者にこう説明した。
「みなさんの息子さんは、将来プロになるためにここにきてますよね? 自分で考えてプレーできない、人に言われないとやる気にならない選手はプロになんてなれませんよ」
少しの時間を経て、保護者はその指導スタイルの重要性を理解していった。厳しさの強度とは、怒鳴ったり、きついことをやらせる指導のそれではない。主体的になることを選手に求める態度こそが、本当の厳しさなのだ。
「指導者はもちろん、親御さんにも、そんな厳しさをもってほしい。もっとひとりの人間として尊重すること。そうすれば、子どもたちは間違いなく成長します」と言い切る。
スポーツは人格を浮かび上がらせる
アメリカの著名なスポーツライター、ヘイウッド・ヘイル・ブルーンが、こんな言葉を残している。
(Sports do not build character. They reveal it.)
日本ではスポーツを人格形成、人間教育と位置づける。が、実は、育てるのではなく、人格を浮かび上がらせるものなのだ。
同じ意味で、スポーツをする子どもの姿から、その家庭の子育てが見える。
ミニバスケット、少年少女バレーボール、少年サッカー。どんなスポーツでも、ミスすると親の顔をすぐに見る子どもは少なくないと言われる。親と子の距離、もしくは関係性を見直すことで、そんなふうにビクビクしながらスポーツをする子どももいなくなるのではないか。
大人である私たちが「親という病」を乗り越えることが、スポーツ界のパワハラ指導を一掃し、さらに子どもたちの可能性を伸ばすことにつながるはずだ。
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