「女性医師が診る患者は死亡率が低い」の根拠 最も死亡率が高いのは女性患者と男性医師
その一方で、心疾患の場合、とりわけ患者の医師とのコミュニケーションが重要になると、ゴールドバーグは指摘する。心疾患は女性と男性とで大きく症状が異なるからだ。たとえば心臓発作が起きたとき、女性は男性よりも胸の痛みを覚えることが少ない。だが医師は、胸の痛みがないと聞くと、心臓発作ではないと考えてしまうことが多い。
最近ゴールドバーグのところにやってきた女性患者も、かかりつけの男性医師が、治療法の説明や質問への回答に十分な時間を割いてくれないから、女医を探すことにしたと言っていたという。「患者は、正しい診断を下してもらうだけでなく、自分の話を聞いてもらえたと感じたがっている。医療ではコミュニケーションがとても大きな役割を果たす」。
男性医師は患者の話を遮りがち
フロリダ州の研究チームも、女性医師の治療を受けた女性患者の生存率が高い正確な理由は不明だとして、研究結果を曲解しないよう注意を呼びかけている。女性患者は女医に話をするほうが気が楽だからかもしれないし、女医のほうが女性に特有の症状に気がつきやすいからかもしれない。一般に女性医師のほうが男性医師よりもコミュニケーションが上手で、患者との会話から診断のヒントを見つけるのがうまいのかもしれない。
「女性患者は男性医師を避けるべきだとか、特定のタイプの医者だけを探すべきだとは言いにくい」と、研究チームの一員であるミネソタ大学カールソン経営大学院のブラッド・グリーンウッド准教授(情報・意思決定学)は言う。「ただ、患者は自分の話を真剣に受け止めてもらえるべきだし、自分自身のことをきちんと説明できるべきだ」。
スタンフォード大学医科大学院のドン・バー教授は、医者のコミュニケーション能力に性差があることについて、学生たちにしばしば話をするという。バーによると、男性医師は会話の脱線を防ごうとして、患者の話をさえぎってしまうことが多い。患者の話に口を挟むまでの時間は、女性医師の場合は平均3分、男性医師の場合は平均47秒という研究もある。