次の南北首脳会談をアメリカが気にする理由 韓国・文大統領は何を考えているのか
金正恩朝鮮労働党委員長と文在寅韓国大統領による3度目の首脳会談が9月中に予定されている。信用できる各種英語メディアの報道によると、アメリカのホワイトハウスではかなりの数の高官が、首脳会談に向けて文大統領がどのような策を打ち出してくるかに気を揉んでいるという。韓国・青瓦台(大統領府)がホワイトハウスの希望に反して過激な融和路線を打ち出してくるのではないかと警戒しているのだ。
だが、文大統領が大胆な融和策に訴えてくる可能性は低い。就任以降、文大統領の対北政策は次の3要素のバランスを慎重に保つことが基本方針になっている。すなわち、南北融和の推進と米韓関係の維持、そして米朝戦争の回避だ。現時点で、文大統領が路線変更を考えている様子はない。
アメリカとの軋轢を避ける文大統領
文大統領が下馬評通り大統領に選出され、9年ぶりに保守政党が下野したのは2017年5月。このとき、文氏は盧武鉉元大統領の精神的な後継者と見なされていた。盧氏は2003〜2008年の大統領任期中に北朝鮮との融和路線を維持する一方で反米姿勢を公然と打ち出し、ホワイトハウスをいら立たせた人物である。
しかし、文大統領は盧氏に比べると、かなり穏健で慎重な政治家であることがわかっている。2017年に北朝鮮はミサイル発射実験を繰り返し、核実験も1度行った。これを受けて文大統領は、北朝鮮に対する国際制裁の重要性を強調、北朝鮮政府の行動を厳しく非難している。
2018年に入り、北朝鮮が微笑み外交を展開するようになってからも、文大統領は融和の好機をうかがう一方で、米韓同盟への忠誠心を一貫して表明し続けてきた。
韓国大統領府はこれまでに2度の南北首脳会談を行い、シンガポールにおける米朝首脳会談の実現に向けても重要な仲介役を担ったが、いずれもアメリカと衝突することはなかった。
韓国では、南北融和は非常に人気の高い政策だ。4月に行われた1回目の南北首脳会談の直後には、無党派層の多くが文氏に傾き、同氏の支持率は77%を突破した。文大統領は融和を進める中でも、米韓同盟および国際的な対北制裁を堅持する意思、そして核問題の解決に向けてアメリカ政府と協力していく決意を示してきた。