次の南北首脳会談をアメリカが気にする理由 韓国・文大統領は何を考えているのか
「戦争状態の終結宣言」といったような、やや中途半端な文書に署名するつもりなのではないか、といった憶測も流れている。実際、NK Pro(北朝鮮ニュース有料版)の取材によると、文氏はそのような文書への署名を画策しているのではないか、との懸念がアメリカ政府高官の間で浮上しているようだ。
だが、こうした選択肢がとられる可能性はなさそうだ。というのも、韓国と北朝鮮はそもそも、戦争状態にはない。両国はただ、お互いを正式な国家として認めていないだけだ。また、青瓦台が「戦争状態の終結宣言」なるものへの署名を計画している様子もない。文氏の口から出た「平和定着」というフレーズは、いくつもの政策を含むプロセス全体を指す言葉であって、何か特定の行動を示唆するものではない。
「米朝戦争の回避」が文氏の最優先事項
また、文大統領は韓国からの米軍の撤退を望んでいるわけでもない。文大統領の関心はアメリカを含めて「平和を定着」させることであり、これは大体において現状維持といえる。文氏は米韓同盟を破壊したいと考えているわけではない。
文大統領はアメリカの政府高官が恐れているようなシナリオよりも、融和路線を継続するためにマイルドなアプローチをとってくる可能性のほうがはるかに高い。融和のための融和ではなく、米朝戦争の勃発を回避することが文大統領の最優先課題だからだ。
文大統領がこれまでに積み上げてきた外交的な成果を見れば、同氏が突如として暴走し、自らの成果をぶち壊す側に回ると考えるのは理屈に合わない。現に韓国政府の目標は、米朝の和解にこそある。過激な外交政策を打ち出して、アメリカ政府との関係を悪化させては元も子もない。
すなわち、韓国国内およびホワイトハウスから批判が巻き起こらないようにしながら、南北融和を前進させる方途を探る――これが9月の南北首脳会談に臨む文氏のスタンスとしては圧倒的な最有力シナリオだ。これは、同氏が今年の1月から貫いてきた方針と何ら変わらない。韓国が大幅譲歩を行うのではないかという懸念には、今のところ確たる根拠があるようには見えない。
(文:フィヨドール・テルティツキー)
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