次の南北首脳会談をアメリカが気にする理由 韓国・文大統領は何を考えているのか
文大統領は8月15日の演説で、金剛山観光を再開する可能性に触れており、かつて同観光事業を手がけていた韓国企業も今年中に事業が再開されるとの見通しを口にしている。9月の首脳会談では、観光事業の再開で両国が合意する公算はかなり大きい。
8月15日の演説で文大統領は、道路および鉄道の南北連結も公約した。これについては、非核化が実現するまではインフラの供用は行わない、という条件を付したうえで前進させる道を探ることになるかもしれない(演説で文大統領は、非核化に先だって本格的な経済協力を行うことはないと述べている)。
アメリカ政府が恐れるシナリオ
離散家族の再会頻度を上げることも現実的な選択肢になる。離散家族の再会は人道的な観点から行われる事業であるため、党派を超えた支持が得やすい。毎年1〜2回の再開事業を行うことで合意できれば、輝かしい成果となろう。また、これは北朝鮮に対する制裁破りにつながるような事業ではないため、各国からも幅広く受け入れられ、歓迎されるはずだ。
このようなマイルドな南北融和であれば、国会で野党からの抵抗に阻まれることもまずない。4月の南北首脳会談をきっかけに文氏の支持率が大きく上昇したことを考えれば、以上に述べてきたような控えめな成果であっても、支持率を回復させるには十分だろう。
では、急進的な融和路線に踏み込んでくる可能性はどうか。文大統領の性格からして、大胆なアプローチをとるとは考えにくい。また、攻めに出た場合には、実のある成果はほとんど上げられないだろう。
たとえば、韓国から要員を送り込んで北朝鮮の鉄道整備を行えば、国際的な対北制裁に違反することになり、韓国国内でも一大スキャンダルとなろう。
北朝鮮と独自に「別の平和条約」を結ぼうとした場合はどうか。米朝の和平を実現するという、そもそもの大方針が台なしになるばかりか、現存する休戦協定とも整合性がとれなくなる。休戦協定を変更、もしくは別の条約に置き換えるには署名国の同意が必要になるからだ(韓国は署名国ですらなく、北朝鮮が過去に6回も休戦協定からの脱退を表明してきた事実を忘れてはならない)。