
<インタビュー前編はこちら>
「MATSURI」の成長に社員の実力まだ追いつかず

――「MATSURI」はなんのためのプロジェクトなのでしょうか。
単に藻のため、あるいはちとせという会社のためだけにやっているものではない。石油に代わるバイオエコノミー、バイオマスがすべての原料になる社会を作っていくわれわれの目標実現のためだ。それは1社でやることではなくて、いろいろな業種の多くの企業が皆で技術を持ち寄って作り上げるものだ。
今年からは、藻だけでなく農業とか発酵とかセンサーとかすべてを「MATSURI」のなかに入れてやっていくことに変更した。
――現在はどの段階まで来ていますか。評価を聞かせてください。
パートナー企業はすごく期待してくれている。ただちとせの実力がまだそれに追いついていない。質、量ともにもっと充実させないといけないが、当社の実力不足でできず申し訳なく思う。「MATSURI」プロジェクトの今の成長スピードに社員の成長スピードが追いついていない部分はある。
――具体的な例は?
提携企業からはいろいろなアイデア、要望が上がってくる。当社の社員も一生懸命、それを聞いて集めてくるが、各社のアイデアなどをうまくつなぎ合わせていないケースもある。私の目からは「これとこれ、こうつなぎ合わせればいいのでは」と思うこともあるが、まだ当社の社員が気づかず、もったいないということがある。もちろん、そういうことはどんどん教えてはいるが、できるようになるまでには3年、5年と時間がかかる。
――人手が足りていないのではないのでしょうか。
それはある。もちろん採用はしているが、全方位的にできる人でないとこの仕事はうまくいかない。簡単な仕事ではない。コンサルタントならできるかといえば、やはりバイオの知識があるのが前提になって外部にも適任の人材はそういない。
――当面一番重要な2030年の2000haの商用段階までに「MATSURI」も一定のレベルに到達しないといけません。
資生堂と藻由来の化粧品を、武蔵塗料とバイオ塗料を作ったりしているが、そういうパートナー企業のことだけを考えても、彼らが欲しい供給量を考えると2000ha時点での生産量ではまだ足りない。
資生堂は日本全国に製品を売る規模の化粧品メーカーだ。2027年の100haの培養時点でもペットボトル100万本の製造を目指しているが、「MATSURI」にはキリン、サントリー、アサヒなど大手が参画している。100万本でもこうした企業の必要量から考えると焼け石に水の量だ。
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