次の南北首脳会談をアメリカが気にする理由 韓国・文大統領は何を考えているのか

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ということは、経済を軸としながら和平交渉を進展させ、非武装地帯をまたいだ移動の自由を多少なりとも実現することが当面の政策目標となるはずだ。

韓国のねじれ国会は、この点で非常に大きな意味を持ってくる。文氏率いる革新系の議席数は国会過半数に達していない。法案を通すには151議席が必要だが、文氏の中道左派陣営は129議席。その他のリベラル系(5議席)および極左(1議席)の議員から協力が得られたとしても、依然、過半数には及ばない状況だ。

支持率低下と野党の包囲網

対する保守系の野党陣営は各派合計で156議席を押さえ、過半数を確保できている。このような状況で南北統一関連の法案を通過させるには、文大統領は野党陣営に対して相当な譲歩を差し出さなければならない。踏み込んだ融和政策は、保守からの反対によって阻止されよう。

一時は77%をつけた文氏の支持率も、ここ数カ月で56%まで下がってきている。依然として高い支持率を維持できているとはいえ、この支持率低下は青瓦台にとっては頭痛の種だ。

この点からも、9月の南北首脳会談は文大統領にとって極めて重要なイベントとなる。4月の南北首脳会談に向けて文大統領の支持率は着実に上昇していった。南北対話が無党派層の支持率向上を牽引した格好だ。文大統領は9月の南北首脳会談をきっかけに、4月のような成功体験を再現したいと考えているに違いない。

では、9月の南北首脳会談で文大統領はどのようなアプローチをとってくるのだろうか。第1の選択肢となるのが、アメリカの怒りを買わない範囲で最大限の融和を目指す穏健路線だ。

青瓦台が具体的に提案できる案件としては、まず観光事業の再開が挙げられる。2000年代半ばには、韓国から北朝鮮の金剛山(クムガンサン)や開城に出かける観光ツアーが存在した。北朝鮮政府は、こうした観光事業の再開に対する関心を繰り返し表明している。

観光は国連制裁の対象にはなっていないため、文大統領が8月15日の演説で言及した南北間の自由な移動に向けた第一歩として提案することは可能だ。実際、中国企業は現在も北朝鮮国内で合法的に観光事業を展開している。

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