石破茂「法案は通りさえすればいいは問題だ」 総裁選出馬、渦中の人が語る日本人の働き方

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さらには、質問されたことに対して答えない、法政大学の上西充子教授が名付けた「ご飯話法」の問題もありました。そもそも、自民党の昨年の衆議院選での公約集には「裁量労働制」も「高度プロフェッショナル制度」も明確には書かれていませんでした。「働き方改革」という言葉にすべてまとめていました。もちろん、総合的な法案だというのもよくわかります。

これは、勇気と真心をもって真実を語っていると言えるのか、と。石破さん、「働き方改革」関連法案をめぐる議論は、正直、公正だったと思いますか?

「働き方改革の法案審議の段階で、どれだけ多くの人の理解が深まったか」(石破茂氏)(撮影:梅谷秀司)

石破:私は与党の立場だし、法案に賛成しています。そのことには責任を負わなくてはならないと思っています。それが正直だったのか、公正だったのかと批判する立場にはいないわけですね。

ですけれども、どんな法律でもそうなのですけど、通ればそれでいいとは思っていません。法律は成立し、施行されたその日からすべての国民に及ぶものです。法案審議の段階で、どれだけ多くの人の理解が深まったかと。野党は賛成してくれないにしても、さらには「政府の言っていることは理解できるけど、賛成はできないよ」でもいいんです。まだまだだと思っています。

その理由はいくつもあるのですが、裁量労働制に関しては出てきたものが信用するに足らないデータだった。あれはやっちゃいけなかった。裁量労働制は法案から外しましたけどね。

野党が疑問に思っていることに、もっと答えるべきではなかったかなと思います。法案には賛成しながらも、残念な想いはしました。

常見:国民の不信感は、プロセスにこそあるのではないかと思うわけです。

国民から理解を得るにはプロセスが大事

石破:民主主義はね、プロセスなんですよ。結果が大事だというなら独裁制だっていいわけです。できるだけ多くの人が参加すること、参加する人に正しい情報が与えられること。この2つが、民主主義が機能するために必要だと私は思っているんですね。

国会審議においても、議員に対して正しい情報が与えられて、その基盤である国民に対しても正しい情報が与えられたのか。決してそうではない点があったと思います。

私は防衛庁長官の時も、防衛大臣の時も、農林水産大臣の時も、国会答弁はお願いだからわかってくださいということに専念した。法案は通ればいいのではない。成立、施行の段階で多くの国民に理解してもらう。そのプロセスにおいて大事なのが国会審議だと思っているんです。

労働法制に関して言うと、実際に労働者の立場に立って、裁量労働制になったら、本当に労働というものが充実してくるのだろうか。つまり、私たちが就職した昭和50年代は、景気もよかった。私は銀行に勤めていましたが、「お前の代わりはたくさんいるんだ」と言われました。そんな時代でした。

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