でも、これだけ人口が減ってくると、お前の代わりなんていないんだということになる。労働者一人ひとりがどうやって、よい環境の中で労働ができるかと。労働者が減っているわけだから、どれだけ生産性を上げるか。そのための労働環境を用意できるかと。
出生率が下がってきていますが、それは労働者が自分の時間を確保できないという問題とも関係しています。2人目、3人目の子どもを産むことができるかどうかは、男性が家事をする時間ときれいに比例しています。
人口が減る局面で、労働者の賃金を下げ、非正規雇用を増やし、さらには商品・サービスが安売り競争になり、これもまた賃金を下げ、下請けにしわ寄せがいきました。
むしろ、生産性を上げ、充実した仕事をしてもらい、商品・サービスのクオリティを上げ、「これなら買いたいね」と思わせる仕事ができるかどうかです。
労働者の賃金を下げ、商品・サービスの値段を下げていくというのは、これからの日本にとって、あってはならないのですね。
働き方改革というのは、それに沿うものだったのか。労働環境をよりよいものにし、労働者の所得を増やすものであるのかと。その点について、もっとご理解をいただけるようにするべきでしたね。
常見:その説明が、根本的に足りなかったように思います。高度プロフェッショナル制度や裁量労働制をどうとらえていらっしゃいますか?
労働者が納得できる説明をするよう努力すべき
石破:本当に労働者の労働時間を減らせる可能性があるのか。また、健康が確保されるのか。さらに、最も回避しなければならないのは残業代がなくて長時間労働が蔓延するということです。そうじゃないんだと労働者が納得するものにしなくてはなりません。
常見:私はその点が危険だと思っています。やるとしたならば「これなら納得して裁量労働制や高プロで働きたい」と労働者が安心して選択し、合わないと思ったら避けられるようにするということです。労働者が主導権を握ることですね。
石破:労働者を大切にしなければ、これからの日本は立ち行きません。労働者が長時間酷使されて収入が上がらないのは最悪です。労働者一人ひとりが幸せを実感し、かつ生み出す付加価値が高まっていかないといけません。労働者の収入を増やさなくてはなりません。これでいいのかという疑問を解消し、納得を得なければなりません。その努力が必要です。
常見:高度プロフェッショナル制度も、法案から外された裁量労働制も、さまざまな条件は追加されたものの、悪用される可能性が高いものでした。労働者が苦しむリスクや、副作用についての説明や議論が不十分でした。はたしてこれが、労働者が職場で死なない、傷つかない社会をつくることにつながるのかという疑問に答えきれていなかったのではないでしょうか。
サラリーマン経験者の私からすると、裁量労働制には労働時間を増やしてしまう可能性があることは明らかなわけですよ。それを隠すのではなく、そういうリスクもありますよと丁寧に説明してもらうほうが望ましかったわけです。
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