民主主義と多数決ではなく、議論することが大事です。少数意見にも光を当てなくてはならない。野党も理解しているはずです。
ところで、今は多様な生き方、働き方が求められている時代であります。そんな中、自民党議員の杉田水脈氏が『新潮45』というオピニオン誌に、「LGBTは“生産性”がない」という意見を寄稿しました。あの騒動についてはどう思いますか?
石破:前提として、多様な意見はあっていいと思います。ただ、事実誤認の発言、それから他人を傷つける発言はあってはなりません。
LGBTについての手当が手厚すぎるというのは完全な事実誤認です。何の手当があったのか、と。また「生産性」と「子どもを産む」ということは、そもそも一致する概念ではありません。
LGBTの人以外に視野を広げてみても、不妊治療に取り組まれて、苦しんでいる方もいらっしゃいます。独身の方も多いですし、結婚をしていても収入が低く子どもを産める環境にない方もいらっしゃいます。人にはさまざまな事情があるのです。それを、「生産性がない」という言葉で片付けるのは悲しい。配慮が足りないのは残念でした。これは「自民党には多様な意見が必要だ」とか「懐が深い政党だ」という話とはまた別です。
常見:杉田水脈氏の寄稿、私も読みましたが、ざっと18箇所くらい明らかな事実誤認や、主観の一般化がありました。そのことを批判すると、ネトウヨから約150件の批判コメントがきました。「この、クソパヨク」と(苦笑)。
世の中には事情があって欲しくても子どもを授かれない夫婦もいます。共働きで何とか生活を成り立たせている世帯もある。生産性向上は、労働者の勤勉さだけでは実現しませんよね?
石破:そのとおりです。まったく違う。
常見:付加価値の高い産業を創造しなくてはならないですし、設備投資も必要です。それこそAIやIoTの駆使も必要です。ここも誤解されているポイントです。
なぜ、付加価値の高いものを売らないのか、もっと売れる市場を狙わないのか、ビジネスモデルを変えないのか、なんでも人の力でやろうとするのか、と。成熟、衰退した市場で苦しんでいるのではないかと。結局、自民党も、経産省も、経団連も、次の産業を創ることができなかったんじゃないですか。
石破:そのとおりです。さらに、この国は労働者のスキルを上げる投資が少ないし、仕組みがありません。
生産性を上げるためには、良い商品をつくらなければなりません。長時間働かないといけないというのではありません。いかに付加価値を上げるか、所得を上げるか、いかに家族との時間をつくれるか。その意識がもっと強くあるべきです。
常見:「効率化は戦略ではない」と競争戦略論の大家、マイケル・ポーターは語っています。国も、企業も戦略が弱いのではないかと。
最後に。今、実は自民党はいちばんもろい状態ではありませんか?
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