石破茂「法案は通りさえすればいいは問題だ」 総裁選出馬、渦中の人が語る日本人の働き方

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石破:……うーん、そうかな。自民党がもろい状態は潜在的に続いていると思います。野党が弱いゆえにバラバラだから、強く見えるだけじゃないかと。相手がエラーばかりしているチームだと、勝つのです。

野党の弱さに救われている。じゃあ、力がついたのかというと、そうではありません。相手が弱いと自分も弱くなるのです。

自民党の良さは、自由闊達な意見が交わされることのはずです。侃々諤々(かんかんがくがく)と意見を闘わせる。そして、結論を出し、決まったことをやりきるのです。

われわれ、議員はなぜ、「代議士」と呼ばれるのか? それは、国民の代わりに議論する侍だからです。国民のさまざまな想いを代弁しているのか。そういう自民党になっているのかということはつねに自分に問いかけています。

自民党をもう一度、自由闊達な政党にしたい

常見:私もやはり安倍一強、自民一強ではなく、野党多弱だと感じる瞬間はあります。ご著書でも「もう政権に戻れないと思った」とか「自民党が感じ悪いと思われたら終わりだ」などと警鐘を乱打されています。

石破:乱打しています、まさに(笑)。

常見:それが今、自民党の危険な状態だと思うのですよ。

石破:こういう意見は誰かが言わないといけない。

常見:言えないんですか? ほかの人は?

石破:今回、安倍さん以外で立候補したのは私だけでした。岸田(文雄)さんは党三役として安倍さんを支えないといけないので、躊躇があったと思います。自分の派閥の人たちが不利に扱われたら困るという想いもあるでしょう。野田(聖子)さんも出ませんでした。よくわからないのだけど、推薦人は集まらなかった。

私が安倍さんから閣僚(農林水産大臣)を打診されたのに、なぜ受けなかったか。それは閣僚になると自由にものが言えなくなるからです。

常見:やっぱり、そういうものなのですか。

石破:内閣の一員ですからね。閣僚になるよりも、ものを言う立場のほうが大事だと思ったのです。「なんで受けないのか」「野心のためじゃないのか」と批判されました。でも、間違っていることには、間違っていると言わなくてはなりません。

新幹線や飛行機の中で、よく「石破さん、聞いてよ」と声をかけられます。誰に向いて政治をするのか。国民政党たる自民党はこのことを忘れてはいけません。

私は若い頃は全戸訪問を大事にしました。共産党支持者のご家庭や、労組の幹部のご自宅だとわかっていてもノックしました。自分に反対の人の意見こそ聞かないと。しかも会って話をしないとダメだと思ったのです。閣僚や党三役になると言ってもらえなくなることがある。これはよくないと思います。

常見:以前の自民党は派閥抗争が激しい状態にありました。それも足の引っ張り合いのようにも見えましたが、逆に現在は党内での闘いが少ないのではないかと。野党との最適な対立もない。これはこれで組織は弱くなります。ワンマン企業が腐敗していくのと同じです。気づけば、安倍一強、自民一強だと言われているけれど、気づけば総多弱になっていませんか。

石破:私が言わないと誰も言わないのです。これは自民党の危機です。自分の損得だけで考えてはいけません。

安倍一強に何も言わないと、そのままの弱いレベルで完成してしまう。自民党に代わる政党は今のところあまりありません。自民党が弱くなることについて、国民を道連れにしてはいけない。自民党をもう一度、自由闊達な政党にしたい。

常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家

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つねみ ようへい / Yohei Tsunemi

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年4月より現職。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。

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