「羊を数えたら眠れる」という大いなる勘違い ちまたに広がる「睡眠」の間違った俗説5選

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(画像:『マンガでぐっすり! スタンフォード式 最高の睡眠』より)
⑤「羊を数える」と眠くなる

「眠れないときは、羊を数えると眠くなる」

小さいとき、こう言われた人も多いのではないでしょうか?

しかし、日本語で羊を数えるのはまったく無意味で、むしろ逆効果とさえいえます。

この説は英語圏が発祥とされていて、英語で羊は「sheep」ととても言いやすく、また睡眠は「sleep」なので、それで脳を睡眠モードに切り替える効果があるといわれています。

ところが日本語のヒツジはとても言いづらく、ヒツジが1匹、ヒツジが2匹などと数えていると、逆に目が冴えてしまいます。

なので日本語で数えるのは逆効果。英語圏では「sheep,sheep,sheep……と数えるように」と教えられています。

ちょっとしたことで脳はすぐに眠りを拒否する

マウスを使った実験では、「別のマウスの飼育に2週間ほど使用したケージに新しいマウスを入れると、そのマウスは不眠が誘発される」ことが判明しました。寝室や寝具といった「睡眠環境」がいつもと変わるだけでも、脳は敏感に反応し、眠りに影響が出てしまうのです。

『マンガでぐっすり! スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

このように、脳はささいなことで刺激され、入眠に不向きなモードに変わってしまうので、何の気なしに取った行動が眠りの質悪化を招きかねません。

また、眠りに関しては非常に個人差の影響が大きく、たとえば今でも「人間にとってベストな睡眠時間」というのは割り出すことができていません。「この方法で熟睡できる」と言われていることでも、残念ながら万人に当てはまるとは限らないのです。

睡眠の俗説を鵜呑みにすることなく、起きがけの感覚を注視することが、本当に自分に合った「熟睡度が高い最高の睡眠習慣」の確立につながると思います。

西野 精治 スタンフォード大学医学部精神科教授、睡眠生体リズム研究所(SCNL)所長

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にしの せいじ / Seiji Nishino

医師、医学博士、日本睡眠学会専門医。大阪医科大学卒業。1985年大阪医科大学大学院より新技術開発事業団早石修プロジェクト出向。1987年スタンフォード大学留学。2019年ブレインスリープ創業、2021最高研究顧問就任。2022年NOBシフトワーク研究会設立、会長就任。著書に「睡眠負債」の実態と対策を明らかにしベストセラーとなった『スタンフォード式最高の睡眠』(サンマーク出版)、『スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣』(PHP新書)、『睡眠障害』(角川新書)、『スタンフォード式 お金と人材が集まる仕事術』(文春新書)、『スタンフォードの眠れる教室』(幻冬舎)、共著に『最高のリターンをもたらす超・睡眠術』(大和書房)等。

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