「世界ふしぎ発見!」が33年も続いている必然 レジェンド・オブ・クイズ番組は何が凄いのか

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クイズは初めてではない。私は日本テレビの「アメリカ横断ウルトラクイズ」という番組の初期をプロデュースし、新基軸の企画に挑戦する経験を持っていた。クイズという手法はテレビ的であると感じていた。なぜか? クイズに完全な台本はない。これからどうなるかというハプニング性がある。視聴者と時間を共有する。クイズは一方通行の放送ではない。クイズ自体がテレビ的と言える。

重延 浩(しげのぶ ゆたか)/テレビマンユニオン会長取締役・ゼネラルディレクター 国際基督教大学教養学部卒業後TBSに入社。1970年テレビマンユニオンの設立に参加。2004年度芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。著書に『テレビジョンは状況である―劇的テレビマンユニオン史』などがある(写真:「GALAC」より転載)

でもクイズとは一体誰が発明したのだろうかと考えたことがあった。私が最も同感したエピソードを記す。アイルランドの首都ダブリン市で劇場支配人が飲み仲間に提案した。「意味のない言葉を一つ創って、一夜でそれを有名な言葉にしてしまおうじゃないか」。

そこで支配人は「QUIZ」という4文字の言葉を選び、その言葉を町中の壁に貼った。町の人々はその謎めいた言葉の意味がわからず、なんだ、なんだという噂が町中に広まり、「QUIZ」は一挙に「わからない謎」という意味で流行語になったという。テレビに望まれているのはこの劇場支配人のような発想ではないか。何か今までにないことを独創的に試みること、それがクイズ番組の原点ではないか。テレビ制作者は状況を演出する人でなければならない。

「世界ふしぎ発見!」は、クイズに「歴史」という学術的なテーマを設定した。それが新しかった。「歴史と遊ぶ」という今に続く番組キャッチコピーは、最初の会議で発想された。その手書きの企画書は、電通からTBSへと一人歩きし、日立製作所が提供主に決まった。

「人がいるところには必ず歴史がある」

日立の宣伝部長からは「クイズ番組が今いくつあると思う? 16もある。これを決めれば17番目だな」と言われた。厳しい指摘のようだが、私と日立との間にはドラマやドキュメンタリーで深い絆があった。「毎週放送だから歴史テーマが続かないのではないか?」と質問された。

私は「いえ、そんなことはありません。日本史だけでもテーマは100以上あります。世界には数多くの国があります。人がいるところには必ず歴史がある、私はそう信じています」と答えた。翌日、私は100の歴史テーマ案を書き加えて日立に新しい企画書を渡した。

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