共学に通う「トランスジェンダー学生」の現実 日本初のトランスウーマン教員が解き明かす

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大学という場で、トランスジェンダーが顕在化してくるのは、今世紀、2000年代になってからのことだ。

筆者は、2000年度に中央大学文学部の兼任講師に任用され、「現代社会研究5」という社会学系の科目を担当した。同年度に琉球大学の非常勤講師になった蔦森樹(つたもりたつる)さんとともに、日本最初のトランスジェンダー大学教員だった。

最初の講義の日、週刊誌が3誌も取材に来て、写真週刊誌『FLASH』は見開きページで報じた。それが世に出ると、今度はテレビ局の取材依頼が続いた。バラエティ系は全部お断りして報道系に限定したが、それでも14回の講義のうち5回、教室にテレビカメラが入るという状況だった。それと同時に大量の抗議電話・メールが大学に殺到した……らしい(広報課が、私の目に触れないようにディフェンスしてくれたので見ていない)。

今では考えられないほどの大騒動になってしまった。わずか18年前のことだが、当時はトランスジェンダーが大学の教壇に立つということは、それだけ社会的な衝撃だった。

「六大学」でトランス学生について講演

初回の講義のとき、教壇から約180名の受講生を見渡すと、かなり性別表現が微妙な学生が1人、目に留まった。やはり同類はわかる。「なんだ、学生にもいるんじゃないか」。急に気持ちが楽になったのを覚えている。

その後、中央大学の社会科学研究所の客員研究員をしているとき、「学生相談室の職員研修会で話をしてほしい」という依頼があった。

そして2002年8月、中央大学で行われた「六大学学生相談室連絡会議」夏季研修会で「性別違和感を抱える学生をどう受け入れるか──トランスジェンダーと大学教育」と題する講演を行った。ちなみに、この「六大学」は野球の東京六大学から、東京大学を除いて中央大学を加えた私立大学の集合体だ。

これが、大学におけるトランスジェンダー学生についての、たぶん日本初の講演だったと思う。

そのきっかけは、ある大学で女性から男性になりたい学生が顕在化したことだった。それに対して、今では考えられないことだが、教授会で「けしからん! そんな学生は退学だ」という意見が出て、学生相談室の職員が「いくらなんでも、それはあんまりだ」と思い、筆者に話をしてほしいということになったらしい。

講演でトランスジェンダーの比率を説明し(当時は1万人に1人と言っていた)、「どの大学にも必ずいます」と話したにもかかわらず、いくつかの大学の学生相談員は「ウチの大学にはいないと思います」と平然と言ってきて、筆者に「見ようとしないから見えないのです!」ときつい口調でたしなめられる有様だった。それが2000年代初めの大学の一般的な認識だった。

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