共学に通う「トランスジェンダー学生」の現実

日本初のトランスウーマン教員が解き明かす

2005年度、お茶の水女子大学の非常勤講師となり、トランスジェンダーについて専門的に論じる日本で最初の講座を担当した。そのときには、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(2004年7月施行)が機能していて、戸籍の性別変更が可能になっていた。

そのことを踏まえて、講義の中で「女子学生が在学中に男性へ戸籍変更したら、女子大学はどうするのでしょう? まさか退学にはできないですよね。逆に男性から女性に性別を変更した人が(社会人入試)で女子大学を受験した場合は拒絶できないですよね。法身分的に女性なのですから」という話をした。

講義終了後、研究室に戻ってジェンダー学の教授にその話をして「大学としてはどう対応するのですか?」と質問したら、「考えたこともなかったわ!」という返事だった。それが13年前のことだ。

そうした状況が一変し、大きく進展したのは2010年代に入ってからだ。とくに2012年に始まる「LGBTムーブメント」で性的マイノリティの社会的認知が広がり、大学内おいてもLGBT当事者の学生や教員の活動が急速に高まってきた。

LGBTの「T」に相当するトランスジェンダーの大学教員も少しずつ増えて、2018年度にはついに、東京の有名私大で常勤のトランスジェンダー教員が誕生した。トランスジェンダーの教員がいるのだから、トランスジェンダーの学生がいても、何の問題はないという理屈になる。

トランスが社会に出ていく時代

世の中の人が思っている以上に、現在の大学にはトランスジェンダーは珍しくない。共学の大学はもちろんだが、多くの女子大学にもトランスマン(女性から男性へのトランスジェンダー)の学生がいる(もちろん、お茶の水女子大にも)。

たとえば、筆者が今年度前期に受け持った受講生は2講座合わせて約500人だが、トランスジェンダーの学生は少なくとも2人いる。つまり、250人に1人だ。筆者の講座は、トランスジェンダーの比率が濃縮される傾向はあるが……。

1人は、「この道30年」の「目利き」の私が女子学生だと思ったトランスウーマンの4年生。秋葉原の女装メイドカフェでアルバイトをしている。もう1人は、性別違和が原因で引きこもっていた時期があり、そこから一念発起して入学したトランスマンの1年生。他の学生より少し大人びたまじめな学生だ。どちらも望みの性別で学生生活を送っている。

筆者の受講生ではないが、最近、あるパーティで、素敵なトランスウーマンの院生に出会った。慶應義塾大学大学院(修士課程)で空間デザイン戦略を研究している畑島楓さんだ。女性として某有名建築設計事務所への就職が内定しているとのこと。トランスジェンダーがどんどん社会に出ていく時代になることを実感した。

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