テスラCEOが突然非公開化を取り消した事情

5人の人物が明かしたマスク氏の意図

何年ものあいだ、マスクはテスラの株式を非公開化することを夢見ていた。そうすれば、市場による短期業績への圧力から解放され、株価の激しい値動きからも自由になり、同社の失敗を見込んで空売りをする投資家も排除できる。そんな心配をする代わりに本業に集中し、電気自動車を普及させて、世界の化石燃料への依存を減らすことができると考えていたのだ。

しかし、8月7日にツイッターでその考えを9語で投稿し、「資金は確保した」と記して以来、ほかの心配が浮かび上がってきた。

非公開化を取りやめた4つの理由

非公開化を取りやめるとの発表の中で、マスクは考えを変えた理由として、以下の4つを挙げた。

・既存の株主が、テスラは公開企業でいたほうがうまくいくと考えていること
・既存の株主全員が、非公開株を所有できるわけではないこと
・個人投資家が非公開化でどうなるかが明らかでないこと
・非公開化のプロセスにより、同社初の一般向けモデルであり、同社の財務健全化のカギとなる「モデル3」の生産に集中できなくなるおそれがあること

マスクの考えをよく知る人々によると、新たな投資家との結びつきが強まることにより、課題が出てきたという。サウジアラビアの政府系ファンドから資金提供を受けると、化石燃料をまさにその根幹とする国と組むことになる。同国は、人権的な観点から批判されることが多い国でもある。

電気自動車会社が産油国に支援されるという、この認知的不協和について、マスクは何度も指摘を受けたという。

同時に、テスラ株を所有する大口機関投資家すべてが、非公開化に対応できるわけではないことも見えてきた。大口投資家の多くが、公開株のみのファンドにテスラの株式を組み込んでいたのだ。

英投資会社のベイリー・ギフォードのパートナーであるジェームズ・アンダーソンは、非公開化が取りやめとなる前のインタビューでこう話した。「当社には、この件への対応が非常に難しい顧客もいる」。ベイリー・ギフォードはテスラの大株主で、持ち株比率はマスク以外では最大だ。「このことについてはマスクとも話をし、彼は問題があることを理解してくれた」。

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