「東京五輪ボランティア」への小さくない疑問 ボランティアでも「無償」は違法じゃないの?
「ボランティアはTOKYO 2020を動かす力だ」――。こんなキャッチコピーのもと、2020年東京五輪・パラリンピックのボランティア募集が9月中旬から始まる。会場案内や移動サポートなど8万人を見込んでいる。
過去の五輪でも、ボランティアは活用されており、大会HPには「ボランティアはすごく楽しい」など体験者の声も掲載されている。多くの市民が直接大会にかかわることは、盛り上がりにも影響するだろう。
一方で、一部交通費は出るものの、通訳や医療などの専門的スキルを「無償」で活用しようとする点を批判する声もある。
募集内容によると、ボランティアは「休憩・待機時間を含み、1日8時間程度」だという。面談(オリエンテーション)を通して、具体的な役割・活動場所が決まり、研修を受けなければならない。
労働基準法の規定は「強行法規」といって、両者間の合意があっても違反する部分は無効になる。東京五輪のボランティアは、労働者にはならないのだろうか。あるいは、労働者にならないために、運用上どんな注意が必要になるのだろうか。岩井羊一弁護士に聞いた。
「指示を断れるかどうか」などが判断ポイントに
――ボランティアと労働者の違いはどこで判断されるんですか?
一般に労働者に該当するのは、(1)使用者の指揮監督下において労務の提供をする者であること、(2)労務に対する対償を支払われる者である、という2つの要件を充足する者とされています。この2つを「使用従属性」の要件といいます。
この要件を満たす場合には、労働基準法上の労働者ということになり、最低賃金法がありますので、使用者は賃金を支払わなければなりません。
ボランティアとは、「自発的な意志に基づき他人や社会に貢献する行為」といわれています。自発的な意思で行われる行為であり、「使用者」から指揮、監督を受けない行為である必要があります。