「東京五輪ボランティア」への小さくない疑問 ボランティアでも「無償」は違法じゃないの?

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――「有償ボランティア」というのもありますが、基本的には手当も払えないわけですね。具体的にはどういう部分で区別するのでしょうか?

労働者に該当するか否かは、活動日、活動時間、活動内容を指示されても断ることができるかどうかなどを総合して「使用従属性」があるかないかで判断することになります。

「ボランティア」という名称であっても、労働者に該当するのに無償であれば違法ということになります。また、有償だったときも、最低賃金法を上回るお金が支払われていなければ、やはり違法です。労働者に該当する場合には労働保険への加入も必要となります。

東京五輪のボランティアはどうか?

――大勢が訪れる五輪ボランティアは、指揮・監督を受けるのでは?

HPによるとボランティアが行う活動は「サポート」だと記載されています。たとえば、次のような記述があります。

「競技が行われる会場や選手の生活ベースとなる選手村、その他大会関連施設等で、観客サービスや競技運営のサポート、メディアのサポート等、大会運営に直接携わる活動をします」(東京2020ボランティアホームページ)。

「サポート」であれば、自発的な意志に基づいて行うことを尊重し、活動を断る自由も尊重することもできそうです。

場所や時間の拘束や活動内容の指示について、ボランティアの自主性を尊重することができるよう配慮されていれば、労働者にならないと考えられます。

――ボランティアがあれこれ指図を受けるような形ではダメということですね。運用実態が大事になりそうです。しかし、それで大会が運営できるのでしょうか?

多くの人が集まるオリンピックを運営するためには、指示に従って動いてもらう必要があります。そうでなければ、選手や観客に不都合が生じてしまうかも知れません。

オリンピック運営に不可欠な活動については、ボランティアではなく、労働者として使用者の指揮監督に従ってもらえる人に担ってもらう必要があります。

東京五輪に人材派遣会社などが関与している背景には、こういう事情もあるわけですね。

岩井 羊一(いわい・よういち)弁護士

過労死弁護団全国連絡会議幹事、日弁連刑事弁護センター副委員長 愛知県弁護士会刑事弁護委員会 副委員長
事務所名:岩井羊一法律事務所
事務所URL:http://www.iwai-law.jp/

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