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「知識偏重」「暗記」教育に対する大いなる誤解 「生きた知識」と「死んだ知識」の違いとは?

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  • 今井 むつみ 慶應義塾大学名誉教授、今井むつみ教育研究所代表
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確かに、英単語をひたすら日本語の単語に置き換えてそれを覚えようとする暗記は死んだ知識しか生まない。覚えた断片が、英語を使うために必要な文法の知識にも、英語固有の語彙の構造の発見にもつながらないので、英語という言語のシステムを創造することがまったくできないからである。

しかし、すべての「暗記」が死んだ知識しか産まないのだろうか。プロ将棋棋士の島朗九段が著書『島研ノート 心の鍛え方』で、あるプロ棋士が弟子に課した暗記の仕方を次のように述べている。

指定図書の中からまず一冊、一局ずつ勝った側から並べ、次に負けた側から並べる。そして暗記して棋譜に書き出し、何も見ずに並べて一局が終了する。都合四回ほど同じ将棋を言葉のほんとうの意味の通り、精密に調べる方法だ……(143ページより)

自分の知識を総動員して駒の並びの一つひとつの意味を深く考え、吟味する。その結果、棋譜は考えた内容――つまり、そのときに創造された知識――と一体となって記憶に深く刻まれる。要するに、暗記されてしまう。このように得られた記憶は「生きた知識」となって、必要なときに無意識に思い出される。

達人たちは常に試行錯誤している

学び、覚えたことが「生きた知識」になるか「死んだ知識」に終わってしまうかは、協同学習や対話学習などの学びの形式で決まるわけではない。

認知科学の重要な研究分野の1つに「熟達研究」がある。研究者たちは、学習者があることを熟達していく過程における心と脳の変化の過程を詳細に明らかにするとともに、さまざまな分野の超一流の達人がどのようなマインドを持ち、学びの工夫をしているのかを探究している。

数多くの研究からわかったこと。それは、達人たちは、必ず、自分で独自の「学び方の学び」を工夫していて、そのために常に試行錯誤をしているということである。

学びが、生きた知識を生むアクティブラーニングになっているかどうかは、学びへ向かう気持ちで決まるのである。

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