「知識偏重」「暗記」教育に対する大いなる誤解

「生きた知識」と「死んだ知識」の違いとは?

子どもは教えられずにいったいどうして何万もの単語を覚えられるのだろうか。ひるがえって、大人が英語(あるいは他の外国語)の単語を学ぶとき、さまざまな媒体でその意味を教えられるのに、その単語を使って英語を話したり書いたりすることができないのはなぜだろうか。

その秘密は、子どもがことばを学ぶときには、決して一つひとつのことばをバラバラに覚えて、そのままにしておくのではない、という点にある。子どもはつねに、新しいことばをすでに知っていることばとの関係で理解する。また、子どもが新しいことばを覚えるときに、そのことばの意味を覚えることにとどまらず、2つのことが起こっている。

第一に、すでに知っていることばの意味が修正される。たとえば、羊のことを「ヤギ」と呼んでいたのが、1匹の羊に対して「ヒツジ」という言葉で呼ばれることを知ると、広く取り過ぎていた「ヤギ」の範囲を自分で狭め、「ヤギ」と「ヒツジ」を区別するようになる。

学び方を学ぶ

もう1つはもっと重要だ。子どもはそれぞれの単語の意味を推測し、覚えると同時に、語彙全体の仕組みについて探索する。一つひとつの単語のレベルではなく、それよりも大きなくくりで語彙を分析し、その中の規則性をとらえてそれを新しい単語の推測に使ったり、新しい単語を自分で創り出したりするのである。

たとえば、ある子どもは、おばあさんが客に「ソチャ(粗茶)ですが」と言いながらお茶を差し出すのを聞くと、「ソ」はお客さんに言うときの枕として付けるのだと考え、自分の猫を見せて「ソネコです」と言った。このような語彙に潜む汎用的な仕組みを発見すると、新しいことばを覚えるスピードがどんどん加速していくのである。

これを認知科学では「学び方を学んだ」という。

言い換えれば、子どもは機械的に語彙中の単語の数を増やそうとだけしているのではない。個々のことばを超えた語彙というシステムの構造を発見すべく探究し、同時に、すでに持っている知識を修正、再編成している。

この過程があるから、母語の知識は「生きた知識」なのであり、すでに持っている知識が新たな知識を創り出すという「創造のループ」が生まれるのである。

このような、生きた知識を創造する過程こそが「アクティブラーニング」の本質である。「アクティブラーニング」を標榜するなら、知識を事実の断片の集まりととらえ、「知識偏重」と言って知識を非難する前に、まず知識とは何かを考え、知識の本当の姿を理解してほしい。 

「知識偏重」とともにやり玉に挙げられるのが「暗記」である。

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