こうした世界経済情勢の中で日本はどう位置づけられるか。ドル円は年初からほぼ同水準となっているが、TOPIX(東証株価指数)の年初来リターンは大幅なマイナスとなっている。政治情勢は、一時安倍政権存続への懸念が高まる場面があったが、現時点の報道を踏まえれば、安倍晋三首相が自民党総裁選挙で勝利する可能性は高く、春先まで多かった「首相交代→自民党政権の脆弱化」を懸念していた外国人投資家は少なくなっているとみられる。
日銀が「市場の疑念」を看過する可能性は低い
潜在的なリスクとしてアメリカによる自動車の関税引き上げや日本国内における2019年の消費増税が意識されているのかもしれない。そして、国内経済の成長率・インフレ率を高める経済安定化政策が十分効果を発揮していないことも、8月半ば時点で日本株が、アメリカ株だけではなく欧州株よりも年初来リターンでアンダーパフォームする一因になっているのかもしれない。
7月末の日銀による政策変更については、審議委員の中での意見の相違が影響したため、「緩和徹底」と「緩和軽減」の双方の政策が混在したと筆者は考えている。今後の政策がどのように動くかは、経済・インフレ動向に加えて、当局の議論が今後どう展開するかにかかっているとみる。
こうした中、「緩和軽減」になりうる日銀によるETF購入金額減少が事務方の裁量によって進められているとの思惑が、足元の日本株市場の懸念材料になっているように見受けられる。ただ、金融緩和を徹底するという方針があることを踏まえれば、「ETF購入減額による株安を容認するのでは」という市場の疑念を、日銀がこのまま看過する可能性は低いのではないだろうか。このような思惑による日本株安は長続きしないと筆者はみている。
ところで、7月の日銀の金融政策の変更は、金融緩和の副作用を和らげ、強力な金融政策の持続性を高めるために行われたと説明されている。そのために、変動幅が極度に小さくなった長期金利に上下する余地を作った。実際に、弊害として黒田日銀総裁が明言したのは、国債市場での取引が大きく減ったことである。
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