安倍首相は「目的に対し合理的」な宰相である 「スピーチライター」が語る安倍首相の真実

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谷口:私が安倍首相の外交スピーチをいくらか起案しているのを知っている人には、「役人には書けませんね」などとお世辞を言う人がいる。でも、じゃあ民間なら、「書ける」のでしょうか。仕事柄、経済界お歴々のスピーチを聞く機会もちょくちょくあります。大概は……、いや、言わぬが花でしょう。

なんか、大向こうを意識した振る舞いをすることに、皆さんためらいがあるように感じます。「ひとり浮いている」と言われやしないか。「ショーマンシップがすぎる」と陰口をきかれやしないかという「陰口恐怖症」が、スピーチを地味にしているのでは。

これは目的に対して合理的対応ができていないことを意味します。株主さんの手前、パフォーマンスが上がっていないともいえませんか。

スピーチとは空間芸術ですし、音声を伴ってこそ成り立つ音響芸術でもあります。「ゲイジュツ」なんて高尚なことを言わずとも、緩急、「間(ま)」の術ですから、立派な話芸でもある。練習しないでいいなんて、どうして思えるんでしょう。

一流企業の社長さんは、みんなかつての受験秀才です。毎日何問と決めて、数学の問題を解いたりしたんじゃありませんか。スピーチにも、そういう目的合理的対応が要ると思います。

ちなみにYouTubeには、本田宗一郎や、盛田昭夫の「話術」が記録されて残っています。いかにも人柄のにじみ出る独特のものです。ご覧になってみるといい。

安倍首相には「昭和のオヤジ」的要素がない

岡本:話は変わりますが、安倍首相には女難の相があるのではないでしょうか。もっと優秀な女性は世の中にはたくさんいるのに、なぜか、問題のある女性を引き寄せている。そもそも、安倍総理には「昭和の家父長的なイメージ」は薄く、どちらかというと女性の尻に敷かれている、というか、振り回されている感じがするのですが。

谷口:安倍昭恵さんに関する私の評価は、相当詳しく自分の本で書きました。興味のある方は、ぜひお読みください。ほかでは読めないことを書いたつもりです。夫婦のたどってきただろうこれまでの道のりとかも。

「女難」ウンヌンが、どなたを具体的に意味しているか突っ込んでは伺いませんが、これは女性だろうが男性だろうが、政治家たるもの、末は大臣、やがては首相と上を狙うなら、自分を厳しく律して勉強、勉強、また勉強なんじゃありませんか、一般的に言って。

昭和のオヤジ的要素を安倍首相に見ない、というご指摘は、なるほどなと思います。確かに一度もそんなオヤジオヤジしたところ、もう少しかみ砕いて言うと人のことをしかりたがるとか、「おい、頭が高い、控えてろ」と言いたがるようなボスっぽいところは、感じたことがありませんね。でも私には、たとえば安倍首相がひとりで政局の行方を考えているところとか、そのとき動かしているアタマの動かし方などは、全然見えていません。私が見ているのはごく一部ですけれど、それにしてもやはり「現代っ子」です。

成蹊という自由な校風で、のびのびと育ってもいるので、一期違うと完全服従というような体育会的長幼の序には、なじめないタイプでしょうね。そこが自民党というとても体育会的秩序を重んじる組織に入ると、最初のうちエラく生意気だと思われた理由かなと思います。

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