岡本:海外向けのスピーチなど、コミュニケーションの努力は見えるが、国内向けには丁寧さ、謙虚さを欠く部分もあるのではないでしょうか。
谷口:ご懸念の多くは、諸外国と比べて異常といっていいくらい長い国会の会期中、これまた突出して異常に長い日数、朝な夕な、首相が国会に縛り付けられて、同じような質問に何度も何度も答えさせられるところに、多く起因していると思います。
首相の答弁は、得てしてワンセンテンス程度に短い形で報道されます。文脈、背景の説明はあったとしても、「見出し」のインパクトの前にかすみがち。そしてその「見出し」は、首相はこう言った、ああ言ったという答弁の引用からきたりする。委曲を尽くし、練りに練って、などという対応をしたくてもそれを許さない言語空間が、1年のうち10カ月も永田町を支配するんです。
リアルタイムで英語にもなって、文脈から切断された言葉が世界を巡ったりもする。おっしゃるような印象は、私はここからきていると思います。
スピーチは「話してこそ価値をもつ」
岡本:最後に、心を打つスピーチのポイントをご指南ください。
谷口:エラそうなことは言うつもりはありませんが、一点言うとすると、必死で作り込みに作り込みを重ね、書き直しに書き直しを続けて、ヤッタ、いい原稿ができた、と喜んだとしても、実は仕事はまだ半分しかできていないということ。スピーチなんですから、「話してこそ価値をもつ」ものだということを、ゆめゆめ忘れないってことです。
ということは、聴衆の反応は、話し手の情熱のカロリー量みたいなものに、けっこう正確に比例して出てくる、ということです。いま会社にいて、社長さんにスピーチを書かないといけない人、原稿も大切ですが、社長さんが「その気」になるかどうかはもっと大切です。
でも社長さんに「その気」になってもらうのも、スピーチをつくるプロセスの一環で、そこが好循環をもって回り始めたら、きっと社長はスピーチで、聴衆に「へぇー」「はぁー」「なぁるほどぉ」と、感嘆の吐息をついてもらえるのじゃないでしょうか。
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