前提だと考えられているものは下に行けば行くほど、覆しにくいものではありますが、その分やめたときの削減効果も大きくなります。安易に当たり前の前提としてとらえずに、やめるべきこと、簡素化すべきことを考えてみるとよいでしょう。
5W1Hで前提を洗い出してみる
何が前提条件となっているかを考えるのは実は難しい、とお気づきの方も多いと思います。自分や周囲も「これが当たり前だ」と思っているからです。そんな時は5W1Hで前提条件をまずはあげてみましょう。
私は人材育成部門に育児休業明けに復職した際にはタイミングが悪く、リーマンショックの直後で部門メンバーが半数以下になっており、小さなお子さんがいたり介護をしていたり、メンタル疾患を抱えていて働く時間に制約のある方がほとんどという状況でした。
これでは以前のような仕事をするのは無理があるということで、まず前提を変えられないか、研修に関する前提を5W1Hで洗い出してみました。
研修とはスキル移転の場である
■What(内容)の前提
コンテンツは確立されたものを使う
■Who(人)の前提
講師と受講生がいる
■When(時間)の前提
日中もしくは業務終了後に行う
eラーニングは時間に縛られずに受けられる
■Where(場所)の前提
教室に集合する
eラーニングは場所に限定されない
■How Many(人数)の前提
人数は20〜30人程度
■How Much(お金の前提)
1講座数十万円
こんな感じで当たり前化している前提を洗い出していくと、「これは変えてもいいんじゃないか?」という意見が出てくるようになったのです。たとえば、「いつでもどこでも受講できるからeラーニングはいい」と考えられがちですが、いつでもどこでも受講できると思っているから受講率が上がらないのでは?という仮説が浮かび、受講できる時間帯だけ制限したところ、それまでよりも格段に受講率が上がったということもありました。これによって何度も受講者に受講促進の案内をするという業務が減らせました。
20~30人のクラスを多数開催することは、スタッフや講師にとってかなりの時間と負荷がかかります。この前提を覆すことはテクノロジーでできそうですね。実際に当時は「セカンドライフ」と呼ばれる仮想空間で世界中の人たちと研修イベントを開催する試験的な試みをしましたが、操作性や英語のコミュニケーションの問題などの理由で定着には至りませんでした。その後は別のテクノロジーを活用して数百人が同時に受講できるよう実施回数を減らすことでスタッフの負担を軽くすることもできました。
VRの進展によっては、今後さらに楽に、安価に多数の人の学びの機会が簡単に提供できるようになるかもしれません。テクノロジーの進展は、できなくて当たり前と思われていることを簡単にできるようにする可能性を秘めています。
増え続ける仕事を前に、高速処理だけで働き方改革に取り組むのは無理があります。自分や組織の中の当たり前に気づき、それをやめたり、ほかのやり方で変えていく。働き方を本気で変えたいのであれば、今の当たり前を疑うところから始めてみませんか?
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