また、同じく文部科学省の分析では、「幼少期に本の読み聞かせをしてもらった子は学力が高い」「家庭で本や新聞を読む習慣がある子は学力が高い」「好成績の学校は少人数指導の取り組みが進んでいる」などもわかっていますから、この3点について市全体で取り組めば、かなり効果があると思います。特に、少人数指導の効果は非常に大きいですし、市長の権限でできることですから、ぜひ取り組んでほしいと思います。
学力差の大きい子どもたちに対して、大人数の一斉授業を続けていても、学力の底上げをすることは絶対にできません。個別指導も含めて、少人数指導に舵を切ることが必要であり、これなくしては教育改革はできないのです。
既に数多くの先進国が少人数指導を実現しています。政令指定都市である大阪市がそれを実行して成果を上げれば、日本全体に非常に大きなインパクトを与えることができるでしょう。なお、少人数指導の効果については本連載の過去記事でも詳述してあります。
悉皆調査ではなく、抽出調査で十分だ
最後に全国学力テストについて、言いたいことがあります。毎年悉皆調査を行って結果を公表する必要が本当にあるのでしょうか。膨大な予算をつぎ込んで、いったい何のためにやっているのでしょうか。
文部科学省のサイトには、全国学力テストの目的についての説明があり、その冒頭に「全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る」と書いてあります。このためには、各都道府県から数校ずつなどの抽出調査で十分なはずです。
すでに何年も前から、数多くの自治体の教育委員会が過去問を分析して類似問題を作り、練習プリントとして子どもたちにやらせています。各都道府県によって取り組みは違いますが、熱心?なところは、2月、3月に練習を行い、春休みの宿題にも出し、テスト直前にもう一度行っています。傾向と対策がわかっている場合、ピンポイントに的を絞ってテスト練習に励めば、当然のことながら点数は上がります。でも、それで本当に子どもたちの学力がついたと言えるのでしょうか。
悉皆調査をして結果を公表するなどということを続けているかぎり、大阪市長のように校長や教員の待遇に結び付けたり、あるいはイギリスや足立区のように「テストの結果で学校の予算を決める」とか「保護者が学校を選択できるようにする」などと言い出したりする政治家があらわれる可能性はつねにあります。もうこの辺で、抽出調査に切り替える決断をしてほしいと思います。
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