大阪市長「学力テスト発言」が危険である根拠 日本は過去何度も同じ失敗を繰り返してきた

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そして、さらに加熱した結果、次のような驚くべき不正も横行しました。

・成績下位の子をテスト当日に欠席させた
・成績下位の子をテスト時間に保健室で休ませた
・テスト中に教師が机の間を回って正しい選択肢を指で押さえて教えた
・教師が高得点の答案を作成し、欠席した児童・生徒の答案として提出した
・成績上位の子と下位の子を隣同士で座らせ、下位の子がわからないところは上位の子の答えを見て書くように指示した

この結果、学力テストは社会問題と化し、世論の大いなる批判を浴びて1966年に中止になりました。

足立区が独自に行っていた学力テストにおける不正

ところが、歴史は繰り返すといいますが、その40年後に同じようなことが起こりました。それは、東京都足立区が独自に行っていた学力テストにおける不正です。足立区では、小学2年生から中学3年生までの全児童・生徒対象の学力テストを2005年から行っていましたが、ある小学校で試験中に校長や教師が机の間を回って間違った答えを見つけ、それを指差しして教えていたことが発覚しました。

同時に、障害のある児童3人の答案をテストの集計から外していたこともわかりました。また、過去問対策は禁止ということになっていたのにもかかわらず、この小学校ではテスト前に過去問を繰り返し解かせていました。これらの不正の結果、この小学校は、2005年には足立区の72小学校中44位だったのが、2006年には一気に1位になりました。この小学校のほかにも、13の小学校で16人、4つの中学校で5人がテストの集計から外されていたこともわかりました。また、3つの小学校と1つの中学校で過去の問題用紙をコピーして練習させていたこともわかりました。

なぜ、このような不正が行われたかというと、1つには学校の予算が学力テストの結果によって配分されることになっていたからです。もう1つは、各学校の平均点と順位を公表し、保護者が学校を選択できるようにしていたからです。

新聞報道によると、当時は子どもたちの間でも「バカ学校」「エリート学校」という言葉が飛び交っていたそうです。これらの実態が明らかになったことで足立区の教育行政は世論の大いなる批判を浴びることとなり、各学校の順位公表や成績による予算の配分などを見直さざるをえなくなりました。

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