娘さんの母性の回復には時間がかかるか無理なのか、今のところわかりませんが、母親とて産むだけでは親になれず、毎日の育児の積み重ねで子どもへの愛おしさが増し、責任感が伴い、母親として成長していくのです。あなたは今まで娘さんの言いなりでしたが、今、この時点ですんなりと、娘の言いなりになるべきではありません。
事情やその家族の資質にもよりますが、親が娘を溺愛、または言いなりになったために、娘をスポイル(過度に甘やかし、ダメにする)した例はいくらでもあります。本来は子どもがするべき仕事を、その親が愛情のあまりやってしまったため、子どもが親の役割を果たせなくなってしまうケースが、少なくないのです。
溺愛したあまりにスポイル
私の友人の京子さんは娘を溺愛したあまりに、娘をスポイルしました。京子さんは病弱で、医師からは体力がないので出産しないようにと告げられていましたが、無理をして帝王切開で一人娘を産みました。病院通いが日課の彼女は、溺愛して大切に育てた一人娘と娘の結婚後も同居し、溺愛は結婚後も続きました。
京子さんの口癖は、「私は人並みの寿命を持っていないから、生きている間にできるだけのことを娘にしてあげたい。人は私のことを子離れしない母親と言うが、自分の子に愛情を注ぐのに誰に遠慮するつもりもない」というものでした。
やがて、その溺愛した子どもが産んだ孫は、その延長線上にいました。3人の孫の入園式や学校行事の参加も、母親より京子さんのほうが熱心でした。3人の孫も、保育園や学校で、たとえば「運動会のゼッケンを縫って」「給食当番のエプロンを今日中に洗って」など、すべて祖母に頼みます。京子さんの娘も、自分の仕事上のことも母親に頼るので、「まるで私は4人のドラエモンのポケットよ」と、疲労快復剤を飲みながら、まんざらでもなさそうでした。
その「ドラエモンのポケット」は、3人の孫が全員小学生の時に、完全に壊れてしまいました。病弱の身でそこまでするかと言われた京子さんが整えた毎食の丁寧な食卓が、京子さんが倒れた後、すぐにその家から消えました。
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